【導入事例】Deutsche Bahnが車両整備の治具を内製化|Formlabs Fuse 1+ 30W

Deutsche Bahnは、鉄道車両の整備で使う治具や保護具を3Dプリントで内製しています。Formlabsの公式事例では、Fuse 1+ 30WとTPU 90Aパウダーで保護カバーを製作したほか、3Dプリント製のマスキング治具を活用することで、塗装作業を30分から2分へ短縮した例が紹介されています。
目次
Deutsche Bahnの車両整備拠点
ドイツの鉄道会社Deutsche Bahnのノイミュンスター拠点は、ICE 1車両の大規模な改修プロジェクトに携わっています。ICE 1は30年以上運行されている車両で、今回の改修では車両の解体から設備の更新、再塗装まで、さまざまな作業が行われました。
こうした車両の整備では、作業内容や部品の形状に合わせた専用の治具が必要になる場合があります。Deutsche Bahnでは、こうした治具や保護具の製作に3Dプリントを活用しています。
ノイミュンスターの車両センターには3Dプリント工房が設けられており、10種類の3Dプリンターを運用しています。Deutsche Bahnでは2015年から3Dプリントを活用しており、これまでに10万点以上の部品を製作したとFormlabsの公式事例で紹介されています。
導入前の課題:専用治具の製作と作業時の傷
車両整備では、市販の汎用治具だけでは対応できない作業もあり、車両や部品の形状に合わせたカスタム治具が必要になります。
従来の方法で木製の治具を製作する場合は、木材の切り出しややすりがけ、切削などの加工が必要です。金属製の治具では、旋盤やフライス盤などを使った加工が必要になるため、治具の製作に時間や作業量がかかります。
また、手荷物棚の再設置では、棚と壁の間にわずかな隙間しかありません。手荷物棚はサイズも大きく重量もあるため、作業中に壁へ傷や衝撃を与える可能性があり、対象の形状に合わせた保護具が求められていました。
使用製品と材料:Fuse 1+ 30WとTPU 90A
手荷物棚の保護カバーは、FormlabsのSLS方式3DプリンターFuse 1+ 30Wで、軟質材料のTPU 90Aパウダーを使って造形しました。TPU 90Aパウダーは柔軟性があるため、手荷物棚と壁の間を保護するカバーに使用されています。
ノイミュンスターの3Dプリント工房では、Nylon 12パウダーも使用されています。Deutsche Bahnでは、製作する部品や治具の用途に応じて、材料や3Dプリント方式を使い分けています。
3Dプリントによる治具製作では、まず試作したうえで実際の形状との適合を確認し、必要に応じて設計を調整できます。従来の加工方法と比べて、CADデータをもとに形状を変更して再製作しやすいことも、専用治具の内製化におけるメリットの一つです。
実際の活用:形状に合わせて作る治具と保護カバー
Deutsche Bahnでは、車両の形状や作業内容に合わせて、さまざまな治具や保護具を製作しています。ここでは、Formlabsの公式事例で紹介されている2つの活用例を紹介します。
塗装用のマスキング治具
ICE 1車両の改修では、内装のプラスチックパネルを取り外して加工・再塗装します。曲面を含むパネルに新しいデザインを施す際には、塗装位置を合わせるための計測やマーキング、マスキングに手間がかかっていました。
そこで、内装パネルの形状に沿う3Dプリント製のマスキング治具を製作。治具をテンプレートとして使用することで、塗装位置を確認しながら作業できるようにしました。

このマスキング治具によって、従来は時間のかかっていた計測やマーキングの作業を簡略化し、塗装工程の効率化につなげています。
手荷物棚の保護カバー
手荷物棚の再設置では、棚と壁の間の限られたスペースに合わせた保護カバーを製作しました。

従来は緩衝材などを使って壁を保護していましたが、常に十分な効果が得られるとは限りませんでした。そこで、手荷物棚の形状と設置スペースに合わせて保護カバーを設計し、TPU 90Aパウダーで製作しています。
導入効果:塗装時間の短縮と傷の防止
公式事例では、3Dプリント製のマスキング治具を活用することで、塗装作業にかかる時間を30分から2分へ短縮した例が紹介されています。専用形状の治具を用意することで、これまで必要だった計測やマーキングの工程を効率化しました。
また、手荷物棚の保護カバーについては、TPU 90Aパウダーで製作したカバーを導入したことで、今回の作業では傷をゼロにできたと担当者が説明しています。
この事例では、3Dプリントを単に既存部品の代替として使用するのではなく、車両や部品の形状、作業内容に合わせて専用の治具や保護具を設計しています。必要な形状をデジタルデータから製作できることが、現場での活用につながっています。
まとめ:現場の形状から道具を設計する
Deutsche Bahnでは、車両の改修・整備に必要となる治具や保護具を、作業内容や部品の形状に合わせて3Dプリントしています。
今回紹介した事例では、マスキング治具によって塗装作業を効率化したほか、TPU 90Aパウダーを使った保護カバーによって、手荷物棚の再設置時に壁へ傷が付くことを防いでいます。
3Dプリントは、専用形状の治具や保護具を必要なタイミングで製作したい場合に活用できる技術です。CADデータをもとに形状を調整して再製作できるため、実際の作業に合わせて治具を試作・調整する用途にも適しています。
治具や保護カバーの内製化に向けて機種・材料を検討している場合は、お問い合わせフォームから、用途や作りたい部品についてご相談ください。
出典
Formlabs「Deutsche Bahnによる3Dプリント製治具での車両メンテナンス効率化」(2024年1月10日公開)。本文と画像は同公式事例をもとに構成しています。















