3Dスキャナーの原理とは?原理ごとの特徴も紹介
- 3Dスキャナー
- 2024.7.8
ものづくりの現場を中心に、立体物を気軽に作成できる3Dプリンターが活用されています。
近年では家庭用の製品も登場し、より身近なものになりました。
3Dプリンターの普及に伴い、立体物を読み取ってデータ化する3Dスキャナーにも注目が集まっています。
実際、現実世界の物体や人物を立体的にスキャンし、3Dデータとして取り込むこの技術は、様々な分野で革新をもたらしています。
ただ身近なものになりつつある3Dプリンターと比較して、3Dスキャナーに関する情報は多くありません。
そこで本記事では3Dスキャナーで立体物を読み取る原理を解説します。
具体的な用途や活用事例も紹介するので、3Dスキャナーに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
3Dスキャナーの原理は?
3Dスキャナーは、物体の表面形状を三次元情報として取得する装置です。
具体的には下記のステップを踏んで3Dデータを作成します。
1.形状計測
アームやプローブなどを使用して直接測定物に触れる、もしくは光やレーザーなどを使い反射・透過・散乱などの信号を検出して測定物の座標データを計測します。
2.データ処理
形状計測で得た情報をもとに解析を行い、物体の表面形状を点の集合体として処理します。
この手順を踏んで得られた3Dデータは、専用のソフトウェアを用いると立体的な3Dモデルとして表現可能です。
3Dスキャナーのスキャン方式の種類とその原理
3Dスキャナーのスキャン方式は、大きく下記の2種類に分けられます。
- 接触式
- 非接触式
それぞれの特徴を詳しくお伝えしていきます。
接触式3Dスキャナーのスキャン方式
接触式3Dスキャナーは、装置に設置されたアームの先にあるセンサーやプローブを、測定物に接触させて表面上の三次元座標を測定します。
測定物に直接接触させるため、高精度の測定が可能です。
ただしプローブが入り込めない複雑な形状や、狭い場所の測定には向きません。
非接触式3Dスキャナーのスキャン方式
非接触式3Dスキャナーは、物体に触れずに下記のようなエネルギーを用いて測定を行います。
- 光
- レーザー
- X線
それぞれ原理や特徴が異なるため、詳しく見ていきましょう。
光学式スキャナー
光学式スキャナーは、その名のとおり「光」を利用して対象物を測定する方式です。主に下記のの3種類が存在します。
- パターン光投影方式
- ステレオカメラ方式
- 構造光方式
パターン光投影方式は、プロジェクターを用いて対象物に光をあて、カメラでその光の変化を捉えて形状を計測します。
高精度で迅速な測定が可能なのが特徴で、精密な寸法測定が必要な分野で用いられています。
ステレオカメラ方式は、対象物を2つのカメラを使って異なる角度から撮影した画像から3D形状を算出する方法です。
VR/ARアプリケーションなどで広く用いられています。
構造光方式は、格子状やストライプ状のシンプルな光を対象物にあて、光の歪みから物体の形状を測定します。
医療分野や映像制作などの分野で広く用いられている方式です。
レーザースキャナー
レーザースキャナーは、レーザー光線を対象物にあてて、座標を取得します。
取得方法には主に下記の3つがあります。
- 三角法方式
- TOF(タイムオブフライト)方式
- 位相差方式
三角法方式は、対象物にあてたレーザー光線の反射光をセンサーで識別する方法です。
得られた情報をもとに、直角三角形の辺の比によって決まる三角比を用いて計算を行う三角法で距離を求めて座標を算出します。
TOF(タイムオブフライト)方式は、反射光がセンサーに届くまでの時間から距離を求める方式です。
小型な対象物を測定するのに向いています。
位相差方式は、波長の異なるレーザー光線を対象物にあて、それぞれの反射光の位相差から距離を求めます。
大型なものを測定するのに向いています。
X線CTスキャナー
ここまで紹介したスキャン方式は、対象物の表面の情報のみを測定できる方法です。
一方、X線CTスキャナーは、医療分野で利用されているCTスキャンと同じ原理で動作する装置で、対象物の内部形状まで測定可能です。
分解したり壊したりせずとも、対象物内部の欠陥などが測定できるため、非破壊検査などに活用されています。
ただ非常に高価な装置であるため、使用者は限られるでしょう。
スキャン方式の原理によって3Dデータの精度は変わる?
スキャン方式によって、測定される3Dデータの精度は大きく異なります。
一般的には、プローブなどを用いて直接対象物に触れる接触式3Dスキャナーの方が、非接触式3Dスキャナーよりも高精度なデータ取得が可能です。
光やレーザーなどのエネルギーを用いて測定を行う非接触式3Dスキャナーは、測定時の環境の影響を受けてしまう場合があります。
ただし、近年の技術革新によって、非接触式3Dスキャナーの精度も向上しているため、用途によっては十分な精度を得られる場面も増えています。
3Dスキャナーでどうやってデータを取得する?
実際に3Dスキャナーを使って3Dデータを取得する手順は下記のとおりです。
- スキャンしたいものを設置する
- ソフトを起動する
- スキャナーとソフトの調整を行う
- スキャンを行い、不要物を削除する
3Dデータを取得する手順を詳しく解説します。
スキャンしたいものを設置する
まずはスキャンを行う対象物を設置します。
使用する3Dスキャナーのタイプによって設置の方法が異なりますが、安定した場所に設置しなければ精度が落ちてしまうので気を付けましょう。
また、回転テーブルが付属している3Dスキャナーもありますが、付属していない場合は、自動回転テーブルや回転式ディスプレイスタンドを用意しておくといいでしょう。
ソフトを起動する
対象物を設置したら、スキャンを行うためにパソコンから専用のソフトを立ち上げます。
起動したら、各ソフトの使用方法に従いスキャンを開始するためのボタンを押します。
スキャナーとソフトの調整を行う
対象物がソフトの画面に表示されるので、測定範囲内に収まるように3Dスキャナーを調整します。
対象物を回転テーブルに乗せている場合は、実際に回転させてみて画面からはみでないかを確認することも重要です。
対象物が画面内に収まったら、ソフト側の設定を行います。
スキャナーと対象物との距離など、スキャン時の環境に合わせて適切に設定しましょう。
スキャンを行い、不要物を削除する
設定が終わり、実際にスキャンを開始すると装置が動きだし、測定が始まります。
この間はスキャンが終わるまでそのまま待ちます。
スキャン終了後、不要なデータの削除が必要です。
回転テーブルや、対象物を安定させるために用いた支えなど、一緒にスキャンされてしまったものがあれば、確認して削除していきましょう。
3Dスキャナーの用途・活用事例
ここまで3Dスキャナーの原理や使用方法を解説してきました。
ここからは、実際にどのような用途で3Dスキャナーが使用されているのか、いくつか事例を紹介します。
建築現場や文化財などの保護
精度の高い作業を求められる建築現場で重要な作業のひとつが測量です。
これまでは人の力を用いて測量が行われてきましたが、3Dスキャナーの登場により現況測量や施工測量などの作業が効率化されています。
また古い建造物や遺跡、世界的な遺産は、老朽化や災害などにより破損してしまうことがあります。
そこで、3Dスキャナーで対象物の3Dデータを記録しておけば、建造物の復元にも役立ちます。
製造業や工場
3Dスキャナーは、製造業や工場といった日本のものづくりを支える産業でも役に立っています。
例えば、製造業の現場では量産に入る前のテスト品が、手加工で作成されることもよくある光景です。
図面が残されていない場合もあり、量産時に苦労することもあるでしょう。
そこで3Dスキャナーを使って作成されたテスト品をスキャンすれば、図面がなくても3Dデータが作成可能です。
その後に量産に必要な金型にすることもできます。
また工場では、常に行われる改善に対応するため、高品質なデータおよびデータ処理・管理が求められます。
例えば配管を増設するとなった場合には、正確な現況データをもとに計画が立てられます。
3Dスキャナーを用いれば、工場の施設の現況データを簡単に、そして正確に取得可能です。
リバースエンジニアリング
他社の製品や図面の無い自社の製品を分解し、製造方法を明らかにする手法をリバースエンジニアリングといいます。
今まではノギスなどを用いて人の目で計測していたものも、3Dスキャナーを用いれば効率的な情報収集が可能です。
測定時間を削減できるため、本来行うべき分析や改善に時間を割けます。
人体を対象としたスキャン
ここまでは「もの」を対象にしたスキャンの事例について解説しました。
「もの」以外には「人体」を対象とした用途でも3Dスキャナーは活用されています。
例えば医療・治療の現場では、高品質の3Dスキャナーで人体の歪みを測定し、施術前後の効果の確認に使用されています。
またファッションの世界では、高い精度の人体スキャンを用いて、精度の高い採寸に活用しているケースもあります。
それ以外にも、人体スキャンのデータをもとにフィギュアを作成したり、3Dアニメーションを作成したりと、さまざまな場面での活用が広がっています。
まとめ
3Dスキャナーの普及により、さまざまな場面で3Dデータの活用が進んでいます。
作業効率の向上や、これまでできなかったことを可能にするなど、新たな可能性を切り開いています。
さらに3Dスキャナーの技術革新が進めば、ますます活用場面は広がるでしょう。
3Dスキャナーの導入を検討されている方は、本記事を参考に用途や目的に合った方式を選びましょう。
弊社では3Dスキャナーの導入を検討されている方に向けて、最適な機器をご提案する導入サポートを行っております。
また、ショールームでは実際にお手に取って体感していただけるので、ぜひご活用ください。