3Dプリンターの仕組みを造形方式別に解説!メリット・デメリットは?
- 3Dプリンター
- 2024.9.9
- メリット・デメリット 造形方式
近ごろ、3Dプリンターがものづくりの現場や個人レベルでの利用が増えている一方、「3Dプリンターってどんな仕組みなの?」「どんな種類があるの?」と疑問に思っている人も少なくないでしょう。
本記事では、3Dプリンターの基本的な仕組みを下記の5つの方式別に解説します。
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット方式
- バインダージェット方式
- 粉末焼結方式
これから3Dプリンターについて学びたい方、導入を検討している方はメリット・デメリットを比較して最適な方式を選んでください。
目次
3Dプリンターの仕組みとは
3Dプリンターとは、デジタルデータをもとに、プラスチック樹脂や金属などの素材を積層して立体的な造形物を作る装置です。従来の製造方法とは異なり、金型などを必要とせず、複雑な形状の物体を手軽に作成可能です。
3Dプリンターで造形するためには、3DCADなどのソフトウェアで設計した3Dデータを、スライスデータと呼ばれる薄い層のデータに変換することから始まります。そのスライスデータをもとに、3Dプリンターは素材を一層ずつ積み重ねていきます。
造形する際に使用する素材は、プラスチック樹脂や液状樹脂、金属粉末などさまざまです。従来の製造過程では難しかった、自由度の高いものづくりを実現しており、近年では、医療分野や航空宇宙産業など、さまざまな分野で活用が進んでいます。
方式別3Dプリンターの仕組みや特徴を比較
3Dプリンターの仕組みや特徴は、造形方式によって異なります。
- 熱溶解積層方式の3Dプリンター
- 光造形方式の3Dプリンター
- インクジェット方式の3Dプリンター
- バインダージェット方式の3Dプリンター
- 粉末焼結方式の3Dプリンター
上記の代表的な5つの方式別に、仕組みや特徴を詳しく見ていきましょう。
熱溶解積層方式3Dプリンターの仕組み
熱溶解積層方式の仕組みは、フィラメントと呼ばれる熱可塑性樹脂を高温で溶かし、ノズルから押し出して積層していくというシンプルなものです。ノズルはX軸とY軸方向に移動し、積層が完了するとZ軸方向に上昇して次の層を形成するのが一般的です。このプロセスを繰り返すと、最終的に3Dモデルが完成します。
熱溶解積層方式は、使用するフィラメントの種類が豊富で、ABS樹脂やPLA樹脂など、様々な素材を選択できるのも特徴です。比較的安価で操作も容易なため、初心者は最初にこの方式を選ぶといいでしょう。
熱溶解積層方式のメリット
熱溶解積層方式のメリットは、まずコスト面です。熱溶解積層方式の3Dプリンターは、ほかの方式と比較して安価で購入できるため、導入コストを抑えることができます。材料となるフィラメントも比較的安価で入手しやすいため、ランニングコストも抑えられます。
さらに、仕組みがシンプルで操作が容易なため、初心者でも扱いやすいのもメリットです。また、素材の種類が豊富なのも大きなメリットと言えるでしょう。ABS樹脂、PLA樹脂、ナイロンなど、様々な種類のフィラメントが使用可能です。
安全性が高いのも見逃せないポイントです。熱溶解積層方式は、比較的低温で造形を行うため、有害なガスや粉塵が発生するリスクも低く、家庭やオフィスなど、さまざまな環境で使用できます。
熱溶解積層方式のデメリット
熱溶解積層方式のデメリットは、他の方式と比較して、造形精度が低いことです。積層痕が目立ちやすく、滑らかな曲面を表現するのが難しい場合があります。また、造形する形状によっては、サポート材と呼ばれる支えが必要です。サポート材の除去には手間がかかり、仕上がりに影響を与える可能性もあります。
さらに、一層ずつ積層していくため、造形速度が遅いのもデメリットです。複雑な形状や大型の造形物の場合は、かなりの時間がかかることがあります。
また、使用されるフィラメントの種類によっては、耐久性が低い場合があります。衝撃や熱に弱い素材もあるため、用途によっては注意が必要です。
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光造形方式3Dプリンターの仕組み
光造形方式は、紫外線レーザーを用いて液状樹脂を硬化させ、造形物を生成する方式です。液状樹脂で満たされた槽に造形プラットフォームを沈め、紫外線レーザーを照射することで、樹脂を硬化させて一層ずつ積み重ねていきます。
レーザーの照射範囲は3Dデータに基づいて精密に制御され、非常に精細な造形が可能です。造形が進むにつれて、プラットフォームは徐々に上昇下降し、新たな液状樹脂の層が露出し、次の層が硬化していきます。このプロセスを繰り返すことで、最終的に3Dモデルが完成します。サポート材が必要な場合もありますが、熱溶解積層方式に比べて造形物の表面が滑らかになるのが特徴です。
光造形方式のメリット
光造形方式の最大のメリットは、その高い造形精度です。微細な形状や複雑なディテールを再現することができ、さらに表面も滑らかに仕上がります。そのため、精密な模型や試作品の作成、ジュエリー製作などに適しています。
また、熱溶解積層方式と比べて積層痕が目立ちにくく、美しい仕上がりを実現できるのも魅力です。透明な樹脂を使用すれば、熱溶解積層方式では難しい透明な造形物を作成できます。光造形方式は、その精密さから、医療分野での活用も進んでおり、歯科医療や医療機器の製造などにも利用されています。
光造形方式のデメリット
光造形方式のデメリットは、初期費用やランニングコストが高くなる点です。装置自体が高価なだけでなく、使用する樹脂も高価なものが多いため、導入にはある程度の投資が求められます。
さらに、使用できる材料が限られており、主に樹脂系の材料しか使用できません。金属やセラミックなどの材料を造形したい場合は、他の方式を用いる必要があります。また、紫外線硬化樹脂は紫外線に弱いため、保管する場合には暗所を利用するなど注意が必要です。液状樹脂で層を満たして造形する構造上、造形物のサイズは比較的小さくなる傾向があります。
インクジェット方式3Dプリンターの仕組み
インクジェット方式は、一般的なインクジェットプリンターと同様の原理で、液体の素材をノズルから噴射し、積層することで造形物を作り出します。インクの代わりに3Dプリンターで用いられるのは、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの液状の素材です。
ノズルから噴射された液体素材は、紫外線光や熱によって硬化し、一層ずつ積み重ねられていきます。インクジェット方式は、材料を噴射して造形するため、他の方式と比べて複雑な形状を比較的容易に造形できるという特徴があります。また、複数の素材を同時に噴射することで、フルカラーの造形物を作成可能です。
インクジェット方式のメリット
インクジェット方式のメリットは、従来の方式よりも表面の質感がなめらかで、微細に造形できることです。それでいて作業時間も短く、複雑な形状も作成できます。また、フルカラー造形が可能なため、デザイン性が高い造形物を作成したい場合に適しています。
インクジェット方式のメリットは、比較的低コストで導入できる点です。他の方式と比較して、装置自体が安価なものが多く、材料費も比較的抑えられます。また、フルカラー造形が可能なため、デザイン性が高い造形物を作成したい場合に適しています。
さらに、材料の種類も豊富で樹脂だけでなく、金属やセラミックなどの材料にも対応している機種もあります。そのため、幅広い用途で活用できます。造形速度が速いのもメリットの一つです。
インクジェット方式のデメリット
インクジェット方式のデメリットは、造形精度が他の方式と比較して低い点です。噴射された液滴の大きさに限界があるため、微細な形状を再現するのは難しい場合があります。
また、造形物の強度が低い傾向にあり、耐久性が求められる用途には不向きです。場合によってはサポート材が必要であり、後処理に手間がかかることもあります。紫外線光や熱による変形や劣化が起こる可能性もあるため、材料選びや取り扱いには注意が必要です。
バインダージェット方式3Dプリンターの仕組み
インクジェット方式は、材料自体を噴射して造形する方式ですが、バインダージェット方式は、粉末状の材料に接着剤を噴射して固め、層状に積み重ねて造形物を作り出す3Dプリンターです。まず、粉末材料が薄く敷き詰められたプラットフォームに、ノズルインクジェットヘッドからバインダー(接着剤)が噴射されます。バインダーは、3Dデータに基づいて指定された箇所にのみ噴射され、粉末材料を結合します。
このプロセスを繰り返すことで、粉末材料が層状に固められ、造形物が形成されるのです。造形後、余分な粉末材料を取り除き、必要に応じて焼結などの後処理を行うことで、最終的な造形物が完成します。
バインダージェット方式のメリット
バインダージェット方式のメリットは、ほかの方式と比べて造形速度が速い点が挙げられます。バインダーを噴射するだけで造形が進むため、複雑な形状でも比較的短時間で造形可能です。
サポート材が不要な場合が多く、後処理の手間を省くことができるのもメリットです。また、粉末材料を敷き詰めるプラットフォームのサイズを大きくすることで、大型の造形にも対応できます。材料の種類も豊富で、金属、セラミック、砂型など、さまざまな材料を使用することが可能です。
バインダージェット方式のデメリット
バインダージェット方式のデメリットは、造形物の強度が低い点です。バインダーで粉末材料を固めているため、他の方式と比べて強度が劣る傾向にあります。そのため、強度が求められる用途には不向きです。
さらに、造形精度も他の方式と比べて低い傾向にあります。バインダーの噴射精度に限界があるため、微細な形状を再現するのは困難です。素材の種類によっては、焼結などの工程が必要になるのもデメリットといえるでしょう。
粉末焼結方式3Dプリンターの仕組み
粉末焼結方式は、金属やセラミックなどの粉末材料にレーザーや電子ビームを照射し、粉末を溶融・焼結させて造形物を作り出す3Dプリンターです。粉末材料が薄く敷き詰められたプラットフォームに、レーザーや電子ビームが照射され、その部分が高温になって、粉末材料が溶融・焼結して固まります。このプロセスを繰り返すことで、粉末材料が層状に固められ、造形物が形成されます。
造形後、余分な粉末材料を取り除き、必要に応じて後処理を行えば、最終的な造形物の完成です。粉末焼結方式の中でも、レーザーを用いる方式はSLS(Selective Laser Sintering)、電子ビームを用いる方式はEBM(Electron Beam Melting)と呼ばれます。
粉末焼結方式のメリット
粉末焼結方式のメリットは、金属やセラミックなどの高強度な材料を造形できる点です。そのため、強度や耐久性が求められる部品の製造に適しています。また、複雑な形状を造形できるのも魅力です。
サポート材が不要な場合が多く、複雑な内部構造を持つ造形物も作成できます。さらに、材料の使用効率が高いのもこの方式のメリットです。余分な粉末材料は再利用できるため、材料の無駄を最小限に抑えられます。
粉末焼結方式のデメリット
粉末焼結方式のデメリットは、他の方式と比べて初期費用やランニングコストが高い点です。装置自体が高価なだけでなく、粉末材料や後処理にも費用がかかります。
また、造形速度が遅いのもデメリットです。レーザーや電子ビームを照射して粉末を焼結させるため、造形に時間がかかってしまいます。後処理が必要な場合には、表面処理や熱処理などを行わなければなりません。
3Dプリンターの種類は?造形方式別の特徴・メリット・デメリットを解説
まとめ
3Dプリンターは、ものづくりの可能性を広げる革新的な機器です。どれも素材を積層して造形する点では同じですが、細かい仕組みは造形方式によって異なります。
それぞれの方式にメリット・デメリットがあり、造形精度、速度、コスト、材料などが異なります。各造形方式の仕組みや特徴を比較して、用途や目的に合わせて最適な方式を選びましょう。
ご自身の用途にどの3Dプリンターが適しているのかわからない方は、お気軽にご相談ください。ご希望があれば、サンプル造形も提供しております。