3Dプリンターの造形方式の種類を比較!おすすめの用途も紹介
- 3Dプリンター
- 2024.6.26
- メリット・デメリット 造形方式
初めて3Dプリンターを使用する際には、どの造形方式を選べばよいか迷うことも多いでしょう。
3Dプリンターにはいくつかの造形方式があり、それぞれに特徴やメリット、デメリットが異なります。
本記事では、代表的な3Dプリンターの造形方式を比較し、初心者の方が自分に合った方式を見つけやすいように性能をまとめました。
初心者でも理解しやすいように、具体例や活用事例も交えながら説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
3Dプリンター造形方式の種類別比較表
3Dプリンターの造形方式の種類別に、性能を表にまとめました。
強度 | 造形速度 | 精度 | |
熱溶解積層方式 | ⚪️ | △ | × |
光造形方式 | △ | △ | ⚪️ |
マテリアルジェッティング | △ | △ | ⚪️ |
バインダージェッティング | × | ◎ | × |
粉末焼結方式 | ◎ | 金属:×樹脂:△ | × |
熱溶解積層方式の3Dプリンター
熱溶解積層方式は、最も一般的な3Dプリント技術の一つです。
この方式では、フィラメント状の熱可塑性プラスチックがノズルで加熱されて溶融し、層ごとに積み重ねられて立体物を形成します。
使用する材料にはABSやPLAなどがあり、家庭用から業務用まで幅広く利用されています。
FDM方式は構造がシンプルで、コストも比較的低いため、初心者にもおすすめです。
なお、略称としてFFF方式やFDM方式とも呼ばれますが、技術の開発や特許取得をしている企業が違うだけで、本質的にはどちらも同じ技術です。
3Dプリンターで使える素材14種類の特徴を紹介!素材の価格相場は?
メリット
熱溶解積層方式のメリットは、まず機器の価格が比較的安いことです。
使用するフィラメントの種類が豊富なため、手軽に入手できます。
材料の選択肢が多く、用途に応じた最適な材料を選べる点も魅力です。
また、操作が簡単で、初めて3Dプリンターを使う人でも使いやすい設計になっています。
比較的メンテナンスが容易なため、必要な部品の交換や修理も難しくありません。
3Dプリンターフィラメントとは?種類と選び方をわかりやすく解説
デメリット
熱溶解積層方式のデメリットは、造形精度が他の方式に比べて低い場合があることです。
積層痕が目立ちやすいため、滑らかな表面仕上げが求められる場合には追加の後加工が必要です。
さらに、フィラメントの材質によっては収縮や反りが発生しやすく、特に大きな造形物を作成する際は気を付けなければいけません。
造形速度も他の方式と比較して遅いこともメリットの一つです。
活用事例
熱溶解積層方式の3Dプリンターは、下記のような場面で活用されています。
- 製造業の試作・最終製品
- 治工具
- 建築模型
- ジュエリー
- フィギュア
その他、部品の修理やカスタマイズにも利用でき、複雑な構造を持つ部品の一部を作成するのに便利です。
熱溶解積層方式は、導入コストもメンテナンスコストも比較的安いため、予算が限られている方にも導入しやすい造形方式です。
コスパ最強のおすすめ家庭用3Dプリンター3選!選び方や作れるものも紹介
値段別3Dプリンターのおすすめ13選!価格相場や失敗しない選び方は?
光造形方式の3Dプリンター
光造形方式は、液体樹脂(レジン)を紫外線レーザーで硬化させて積層する方式です。
高精度で滑らかな表面仕上げが得られるため、精密なモデルやプロトタイプの作成に適しています。
液体樹脂が光に反応して固まるため、非常に細かいディテールを表現することが可能です。
業務用から家庭用まで幅広く使われており、特にデザインや医療分野での応用が進んでいます。
光造形方式はSLA方式やDLP方式、LCD方式とも呼ばれ、それぞれ若干特徴が異なります。
SLA方式は一筆書きのレーザーで液体樹脂を照射するのに対し、DLP方式はプロジェクターを使って面でUV照射します。
DLP方式の方が少ない材料で造形でき、メンテナンスや材料交換が簡単です。
また、LCD方式はDLP方式のようにプロジェクターではなく、液晶ディスプレイのLCDパネルを使ってUV照射します。
光造形方式の中でも、導入コストが安価なのがメリットです。
メリット
光造形方式の3Dプリンターのメリットは、その高い造形精度と滑らかな表面仕上げです。
数十ミクロンのレーザービームを照射して、非常に細かいディテールまで表現できるため、デザインのプロトタイプや精密な部品の作成に最適です。
また、液体樹脂を使用するため、造形後の表面処理が少なくて済みます。
複雑な内部構造を持つ部品も一体成形で作れて、他の方式では難しい複雑な形状の実現が可能です。
デメリット
デメリットは、材料費が高いことです。
液体樹脂は固形フィラメントに比べて高価であり、ランニングコストがかさみます。
プリンター自体の価格も高いため、初期投資が高くなるでしょう。
また、樹脂の取り扱いには注意が必要で、硬化前の液体樹脂は皮膚に触れると有害です。
さらに、造形物が完成した後には洗浄や追加の硬化処理が必要で、手間がかかります。
活用事例
光造形方式の3Dプリンターは、下記のように高精度が求められる分野に適しています。
- ジュエリーのデザイン
- 歯科用モデル
- 精密機器の部品
- 製造業の見本・試作品
- ディテールの細かいアート作品 など
その他、小ロットの量産にも最適です。
一般的な量産方法と比較して、光造形方式の3Dプリンターによる量産は、迅速かつコスト効率が高くなります。
3Dプリンターの作品例&アイデア集20選!簡単なものから上級者向けまで紹介
マテリアルジェッティングの3Dプリンター
マテリアルジェッティングはインクジェット方式の1つで、液体の材料をノズルから噴射し、層ごとに積み重ねて造形物を形成する方式です。
光造形方式の応用とも言えます。複数のノズルを使用して高速かつ高精度な造形が可能で、カラーの造形物を作れます。
熱溶解積層方式や光造形方式はドットの連続で積層していくのに対し、マテリアルジェッティングは面単位で積層する仕組みです。
そのため、複数の造形物を一度に製造できます。
メリット
マテリアルジェッティングのメリットは、高速で高精度な造形ができる点です。
面単位で積層するため、複数の造形物を同時に作れる上に、表面が滑らかに仕上がります。
また、複数の材料を同時に使用して、多様なモデルを造形できるのもメリットの一つです。
現状では、複数の材料を同時に扱えるのは、インクジェット方式しかありません。
デメリット
一方、マテリアルジェッティングのデメリットは、使用する材料のコストが高い点です。
液体材料は固形材料よりも高価であり、ランニングコストがかさむ可能性があります。
プリンター自体の価格も高めです。
また、ノズルのメンテナンスが必要であり、詰まりやすい点もデメリットとして挙げられます。
さらに、造形物が脆くなることがあるため、強度が必要な用途には向かないでしょう。
活用事例
マテリアルジェッティングの3Dプリンターは、下記のようなものを造形する際に活用されています。
- 自動車のデザイン確認用モデル
- 建築模型
- 治工具
- 製造業の量産
- 医療用のカスタムモデル など
特にカラー造形が必要な場合や、高速で精密なモデルを作成する必要がある場合に優れた性能を発揮します。
また、教育現場でもデザイン教育や実験用のモデル作成に利用されています。
バインダージェッティングの3Dプリンター
バインダージェッティング(粉末固着方式)はインクジェット方式の一つで、粉末材料にバインダー(結合剤)を噴射して層ごとに固める方式です。
粉末材料としては石膏、セラミック、金属などが使われます。
バインダーで結合された粉末を後で焼結することで、強度を持たせられます。
また、粉末状の材料に着色してフルカラーの造形ができるため、出力した後に色付けする必要がありません。
メリット
バインダージェッティングのメリットは、材料が粉末状で安価で手に入る点です。
余った材料は専用フィルターを通すと再利用でき、材料ロスも最小限に留められます。
また、接着剤を噴射して硬めて造形する仕組みのため、造形スピードが早いというメリットもあります。
他の造形方式と比較すると、その速さは3〜5倍程度です。
デメリット
バインダージェッティングのデメリットは、導入する際に環境を整える必要がある点です。
造形物に付着した粉末を除去するには、粉末除去・再利用ユニットをを設置しなければいけません。
さらに舞った粉塵を除去するための吸引機も必要です。
そのため、環境の整備が導入の際の障壁となります。
また、造形物の強度や精度が他の方式に比べて劣る場合があり、特に精密な部品や高強度が必要な用途には向いていません。
造形後に硬化剤を使用して強度を高められますが、それでも強度を求めている方には物足りないでしょう。
活用事例
バインダージェッティングの3Dプリンターは、下記のような物を製造する際に活用できます。
- 航空宇宙業界や自動車業界の部品
- 義肢
- 製品開発の試作品
- ジュエリーの部品
- 彫刻や芸術作品のモデル など
金属粉末も使えるため、金属部品の試作や少量生産にも利用されます。
業務用3Dプリンターのメーカーとおすすめ機種を紹介!失敗しない選び方は?
粉末燃結方式の3Dプリンター
粉末燃結方式は、粉末状の樹脂や金属などの材料をレーザーで焼結させて層ごとに積み重ねる方式です。
この方式では、ナイロンやポリカーボネートなどの高強度なプラスチック材料が使用されることが多く、強度と耐久性に優れた部品を作成できます。
高温での造形が可能なため、耐熱性が求められる用途にも適しています。
メリット
粉末燃結方式のメリットは、強度と耐久性に優れた部品を作成できる点です。
ナイロンやポリカーボネートなどの高強度材料を使用すれば、機械部品や機能部品の試作に適しています。
また、サポート材が不要で、複雑な形状の部品も一体成形で作成することが可能です。
さらに、高温での造形が可能なため、耐熱性が求められる用途にも対応できます。
デメリット
デメリットとしては、まず装置および材料のコストが高い点が挙げられます。
また、造形中に高温が必要なため、エネルギー消費が大きくなります。
さらに、造形物の表面が粗くなるため、滑らかな仕上げが必要な場合には後加工をしなければいけません。
粉末材料の管理も重要で、湿気や汚れが混入しないように注意が必要です。
活用事例
粉末燃結方式の3Dプリンターでの造形に向いているものは、下記のとおりです。
- エンジニアリング部品
- 自動車部品
- インプラントの試作
- 模型
- インテリア など
主に高強度と耐久性が求められる部品や少量生産、カスタムメイドの製品の製造に利用されます。
3Dプリンターの種類は?造形方式別の特徴・メリット・デメリットを解説
まとめ
3Dプリンターの造形方式には、それぞれ異なる特性と用途があります。
例えば、熱溶解積層方式は、コストパフォーマンスが高く初心者に最適ですが、造形精度が低い場合があります。
一方で、光造形方式は高精度な仕上がりが魅力で、デザインや医療分野で活躍しますが、材料費が高くなります。
このように造形方式によって特徴やメリット・デメリットはさまざまなので、それぞれの方式を理解した上で自分の目的に合った3Dプリンターを選ぶことが大切です。初心者の方も今回紹介した比較表を参考に、自分に最適な3Dプリンターを見つけてください。
どの3Dプリンターが合うのか判断が難しい場合は、用途別に最適な機器のご提案もしておりますので、お気軽にご相談ください。