3Dプリンターのデメリットや注意点は?メリットや導入事例も紹介
- 3Dプリンター
- 2024.2.28
- 導入事例 メリット・デメリット
近年3Dプリンターは、製造業を中心にさまざまな分野で導入されています。
一部の種類は特許期限が切れて、以前に比べて低価格化、性能の向上が著しい状況です。
今後もますます活躍が期待されていますが、場合によってはデメリットもあります。
この記事では3Dプリンターのデメリットや注意点、メリット、導入事例を紹介します。
3Dプリンターの導入を検討している方や、3Dプリンターがどんなものか気になっている方は、参考にしてくださいね。
3Dプリンターを導入するデメリット・注意点
3Dプリンターは用途や目的によっては、導入しても活かせないケースがあります。
導入を考えている方は、2つのデメリットに注意しましょう。
大量生産に向いていない
3Dプリンターは1つのものを造形するのに時間がかかるため、大量生産には向いていません。
造形時間は製品によって異なりますが、20cmの造形物を作り出すのに10時間以上かかるものもあります。
そのため、時間の観点から見ると、従来の方法で製造した方が効率的なケースもあるでしょう。
求める仕上がりになるとは限らない
3Dプリンターは、樹脂や金属などのフィラメントを一層ずつ積み重ねて造形するため、結合部分が弱くなることがデメリットです。
強度が低いだけでなく、耐久性にも影響する可能性があります。
試作品であれば、高い強度や耐久性は必要ないかもしれませんが、製品を作る場合は造形物の精度も見極めなければいけません。
既存の製造技術に比べると劣る部分がありますが、3Dプリンターの技術は年々進化しており、課題を克服できる製品も登場しています。
3Dプリンターで使用できる材料の種類も増えているので、今後はますます広範囲な分野での活躍が期待できます。
3Dプリンターを導入するメリット
次は、3Dプリンターを導入する5つのメリットを見ていきましょう。
試作や開発に費やす時間を短縮できる
従来の方法で試作品を製造すると数日〜数週間の期間が必要で、外注する場合はさらに多くの日数がかかりました。
一方で3Dプリンターを使用すると、試作品を1日以内で作れるため、製造にかかる時間を大幅に短縮できます。
万が一、試作品に不具合があった場合にも、素早く修正して新たに造形できるでしょう。
これにより設計や試作のサイクルを効率化でき、製品を市場に出すまでの期間も短縮可能です。
開発にかかる費用を削減できる
3Dプリンターを使って社内で作れるようになれば、製造にかかる費用も削減できます。
従来の方法で製造を外注する場合は、メーカーとの打ち合わせや製造にかかる費用が必要でした。
ところが、3Dプリンターで内製化できれば、外注にかかる費用は必要ありません。
導入コストやランニングコストはかかるものの、開発にかかる費用が削減できたら初期コストを回収できるでしょう。
3Dプリンターの価格に関して詳しくは「値段別3Dプリンターのおすすめ17選!価格相場や失敗しない選び方は?」を参考にしてください。
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3Dプリンター1つで加工できる
これまでは試作品や治具を製造する際に切削工法が広く用いられていましたが、切削工法には中空構造など作成できない形状がある点がデメリットでした。
一方で、3Dプリンターが1台あれば、中空構造などの複雑な構造も一度の作業で完成します。
このように従来の方法では難しかったアイデアも、3Dプリンターがあれば具現化できるでしょう。
新しいアイデアを気軽に試せる
3Dプリンターがあれば、新しく思いついたアイデアを気軽に試せるため、新たなアイデアを生み出すハードルが低くなる点がメリットです。
小さいものであれば数時間で造形できるため、新しいアイデアに対して試行錯誤するサイクルも短縮できます。
もし造形物にミスがあったとしてもすぐに再度造形でき、本格的な製造に入る前に改善することで、後の工程にも影響しにくくなります。
余分に在庫を抱える必要がない
3Dプリンターで造形できる体制を整えれば、その場で作り出せるため、試作品の在庫を抱える必要はありません。
3Dプリンターにはフィラメントと呼ばれる材料が必要ですが、もしフィラメントが余ったとしても別のものを造形する際に使えるので、無駄に在庫を抱えなくて済みます。
フィラメントは筒状に巻かれており、薄い円形状になっているため、保管する際も広い場所を必要としません。
3Dプリンターのフィラメントに関して詳しくは「3Dプリンターフィラメントとは?種類と選び方をわかりやすく解説」も参考にしてください。
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3Dプリンターの造形方式ごとのメリット・デメリット
3Dプリンターには主に下記5つの種類があり、造形方式によって造形物の精度は異なります。
- 熱溶解積層方式
- 光造形方式
- インクジェット
- 粉末焼結方式
- 粉末固着方式
3Dプリンターの「求める仕上がりになるとは限らない」というデメリットも、適切な造形方式を選べば解消できる可能性が高いです。
3Dプリンターの造形方式ごとのメリット・デメリットを見ていきましょう。
熱溶解積層方式のメリット・デメリット
熱溶解積層方式のメリット・デメリットは、下記表のとおりです。
メリット | ・導入コストが安い ・小型で場所と取らない ・材料・カラーの選択肢が多い ・強度に優れている |
---|---|
デメリット | ・細かい質感を表現できない ・層と層がもろい ・サポート際の除去に手間がかかる |
熱溶解積層方式の3Dプリンターによる造形物は、耐久性や耐熱性があるため、試作品や治具、簡単な造形に向いています。
一方で、断層が目立つデメリットがあるため、表面が滑らかな質感を求められる場合は向いていません。
光造形方式のメリット・デメリット
光造形方式のメリット・デメリットは、下記表のとおりです。
メリット | ・造形物の精度が高い ・滑らかな質感に仕上げられる ・透明度の高いモデルも造形できる |
---|---|
デメリット | ・サポート材を除去しなければいけない ・太陽光に長時間当たると変形・割れが発生する ・造形物によっては洗浄・二次硬化しなければいけない |
光造形方式の3Dプリンターによる造形物は、高い透明度が求められる自動車ライトやLEDライトの試作品に実用されています。
また、フィギュアや模型のような見た目が重要視されるものにも最適です。
インクジェット方式のメリット・デメリット
インクジェット方式のメリット・デメリットは、下記表のとおりです。
メリット | ・繊細で滑らかな表面に仕上げられる ・配合次第でさまざまなカラーを表現できる ・複数の材料を同時に扱える |
---|---|
デメリット | ・耐久性が弱い ・直射日光が当たると劣化する ・稼働音が大きく、サポート材の匂いがきつい |
インクジェット方式はカラーが豊富なメリットを活かして、建築模型やフィギュア、医療の骨モデル製作などに向いています。
粉末焼結方式のメリット・デメリット
粉末焼結方式のメリット・デメリットは、下記表のとおりです。
メリット | ・複雑な造形にも対応できる ・耐久性が高い ・3Dプリント時にサポート材が必要ない |
---|---|
デメリット | ・造形物の表面がザラザラしている ・3Dプリンターの装置自体が大きい |
粉末焼結方式の造形物は試作品や機能部品の造形だけでなく、最終製品にも活用されています。
具体的には自動車部品や医療用品、家電製品、工業製品などの用途に最適です。
粉末固着方式のメリット・デメリット
粉末固着方式のメリット・デメリットは、下記表のとおりです。
メリット | ・フルカラーで造形できる |
---|---|
デメリット | ・造形物がもろくて割れやすい |
粉末固着方式による造形物は出力後に塗装する必要がないため、建築模型やフィギュアなど発色が求められる場面に向いています。
3Dプリンターの造形方式の種類について詳しくは「3Dプリンターの種類は?造形方式別の特徴・メリット・デメリットを解説」もご覧ください。
3Dプリンターの種類は?造形方式別の特徴・メリット・デメリットを解説
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3Dプリンターの導入事例
次は、3Dプリンターを導入している企業とその事例を紹介します。
航空・宇宙分野「インターステラテクノロジズ株式会社」
インターステラテクノロジズ株式会社は、堀江貴文氏が創設した液体燃料ロケットの開発を行う企業です。
もともとは家庭用3Dプリンターを使用していましたが「大きいモデルを造形できない」「サポート材が取れにくい」などの課題があり、業務用3Dプリンターを導入しました。ロケットの部品を原寸サイズに造形して、さまざまなシミュレーションに活用したり作業に必要な治具を作ったりする際に、業務用3Dプリンター「Creator4S」を活用しています。
産業製品分野「東北電子産業株式会社」
東北電子産業株式会社は、CL事業・ものづくり・技術商社の事業を行う企業です。
以前から家庭用3Dプリンターを使用していましたが、ノズルが詰まったり造形途中にモデルの形が崩れたりする不具合があり、業務用3Dプリンター「Guider2」を導入しました。
設計検討段階で、切削部品の模型を作成する際に3Dプリンターを活用し、出力したモデルでシミュレーションをしています。
その結果、本製品を作り直す回数が減り、切削コストを削減できたようです。
自動車分野「帝京大学理工学部機械・精密システム工学科」
帝京大学理工学部機械・精密システム工学科の学生フォーミュラチーム「帝京フォーミュラプロジェクト」では、フォーミュラカーの部品を製作する際に3Dプリンターを活用しています。
実際に使っているのは、FLASHFORGE製の3Dプリンター「Creator3 Pro」です。
Creator3 Proを導入したことで、マシン部品の一部を3Dプリントで代替えできるようになったそうです。
ロボット分野「立命館大学情報理工学部」
立命館大学情報理工学部のプロジェクト団体「Ri-one」は、自律移動型ロボットのパーツを製作する際に3Dプリンター「Adventurer4」を活用しています。
以前はマシニングセンターやNC工作機械を使った機械加工で部品を製作していましたが、複雑な形状の製作が難しいことが課題でした。
ところが、3Dプリンターを導入したことでスムーズに製作できるようになりました。
また、新しいアイデアを思いついたときに気軽に試作できる点でも、メリットを感じているようです。
まとめ
3Dプリンターにはさまざまなメリット・デメリットがあるので、事前に把握したうえで用途に合う製品を選ぶことが大切です。
造形物の強度や耐久性、表面の仕上がりなどの課題も、造形方式や製品の選び方次第で解決する可能性があります。
最後に紹介したように宇宙・航空や産業製品、自動車、ロボットなどさまざまな分野で3Dプリンターの実用化が進んでいます。
3Dプリンターの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。
弊社では用途や予算に合う3Dプリンターのご提案や導入サポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。