3Dプリンターのカーボンフィラメントとは?おすすめの対応機種も紹介
- 3Dプリンター
- 2024.11.22
- メリット・デメリット
3Dプリンターで造形物を印刷する際に使用する素材のなかで、人気を集めているのがカーボンフィラメントです。強度と美しい仕上がりを兼ね備えたこのカーボンフィラメントは、さまざまな分野で活用されている素材です。
本記事では、カーボンフィラメントの基本からメリットやデメリットまで解説します。カーボンフィラメントに対応したおすすめの3Dプリンターも紹介するので、本素材を活用した造形を検討されている方は最後までご覧ください。
目次
3Dプリンターのカーボンフィラメントとは?
3Dプリンターのカーボンフィラメントとは、プラスチック樹脂にカーボンファイバー(炭素繊維)を配合した素材です。一般的には、ナイロンやPETG、PLAなどのベース樹脂に、微細な炭素繊維が均一に配合されています。この組み合わせにより、通常のプラスチックフィラメントでは得られない特性を実現しています。
カーボンファイバーは大きく、下記の2種類に分けられます。
- PAN系
- ピッチ系
PAN系は、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料としており、高い強度が特徴です。一方でピッチ系は、石炭ピッチを原料とし高い弾性率が特徴です。
カーボンフィラメントは、航空宇宙産業や自動車産業など、高性能部品が求められる分野で特に注目されています。
3Dプリンターのカーボンフィラメントのメリットは?
3Dプリンターのカーボンフィラメントに人気が集まる理由は、以下の3つのメリットがあるからだと考えられます。
- 強度などの機械的特性に優れている
- 表面が綺麗に仕上がる
- 寸法安定性に優れている
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
強度などの機械的特性に優れている
カーボンフィラメントの最大のメリットは、優れた機械的特性です。通常のプラスチックフィラメントと比較して、大幅に高い強度と剛性を誇ります。炭素繊維がプラスチック樹脂内で補強材として機能するため、引張強度や曲げ強度の向上が期待できます。また耐熱性にも優れているのも特徴です。
さらに、軽量性を維持しながら強度が増すため、強度重量比が非常に高くなります。従来のプラスチック部品では実現困難だった、高負荷や高精度が要求される用途にも対応可能となり、金属部品の代替としても注目されています。
表面が綺麗に仕上がる
カーボンフィラメントを使用した3Dプリント製品は、表面の仕上がりが非常に美しいことで知られています。炭素繊維が均一に分散されているため、プリント層の境界線が目立ちにくく、滑らかで光沢のある表面が実現可能です。特に黒色の深みのある外観は、高級感と品質の高さを感じさせます。
また、積層痕も最小限に抑えられるため、後処理の手間を大幅に削減できるのもメリットです。美しい仕上がりは、プロトタイプや最終製品の見栄えを重視する産業デザインや消費者向け製品に適しています。
寸法安定性に優れている
優れた寸法安定性は、カーボンフィラメントの大きなメリットのひとつです。通常のプラスチックフィラメントと比較して、熱膨張率が非常に低いため、温度変化による変形や歪みが最小限に抑えられます。その結果、高精度な部品製作につながります。
特に大型の造形物や精密な機械部品の製作時には、寸法安定性が欠かせません。工業用部品や航空宇宙分野など、高い精度と信頼性が要求される用途で特に重宝されています。
3Dプリンターのカーボンフィラメントのデメリットは?
3Dプリンターのカーボンフィラメントには、デメリットもあります。主なデメリットは以下の3つです。
- ノズルの摩耗が激しい
- ノズルが詰まりやすい
- 薄いと脆くなりやすい
ひとつずつ順番に解説します。
ノズルの摩耗が激しい
3Dプリンターでカーボンフィラメントを使用する際のデメリットとして、ノズルの摩耗があげられます。炭素繊維は非常に硬く、研磨性が高いため、造形物を印刷する際にノズル内部を削ってしまうのです。カーボンフィラメントによる摩耗は、通常のプラスチックフィラメントに比べて格段に速く進行し、ノズルの寿命を大幅に縮めます。
特に真鍮製のノズルを用いた場合、わずか数時間の使用で交換が必要になることもあります。カーボンフィラメントを使用する際には、硬化鋼やルビーなどの耐摩耗性の高い材料でコーティングされた特殊ノズルを使用するといいでしょう。
ノズルが詰まりやすい
ノズルが詰まりやすいのも、カーボンフィラメントを使用するデメリットのひとつです。フィラメントの炭素繊維の粒子が非常に細かいため、プリンターのノズル内部で凝集してしまい、時間とともに詰まりの原因となってしまいます。
この問題は特に長時間のプリント作業や、細かいディテールを要する造形で注意しなければなりません。ノズルの詰まりは印刷品質の低下や、プリントの失敗につながります。対策として、定期的なクリーニングや、より大きな径のノズルの使用、適切な温度設定などが求められます。
薄いと脆くなりやすい
カーボンフィラメントは高い強度を誇る反面、薄い部分や細かい構造を造形する際には注意が必要です。炭素繊維の特性上、非常に薄い層や細い部分を作ると、予想外に脆くなるというデメリットが生じます。その理由は、炭素繊維が十分に絡み合って強度を発揮するには、一定の厚みが必要だからです。
薄すぎる部分は、衝撃や曲げに弱く、簡単に破損してしまいます。このため、設計段階で適切な厚みや構造を考慮しなければなりません。また、後処理の際も慎重な取り扱いが必要です。
3Dプリンターのカーボンフィラメントで作れるもの
ここからは、実際に3Dプリンターのカーボンフィラメントで作れるものの代表例を4つ紹介します。
- 金属パーツの代替品
- 治工具
- スポーツ用具
- 宇宙ロケットや航空機の部品
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
金属パーツの代替品
カーボンフィラメントは、その優れた強度と軽量性から、多くの金属パーツの代替品として広く活用されています。金属に比べて低コストで製造できる点も、代替品として用いられる理由のひとつです。また、複雑な形状の部品を一体成形できるため、組立工程の簡略化にも貢献しています。
治工具
高い強度と寸法安定性を持つカーボンフィラメントは、さまざまな治具や工具の3Dプリントに適しています。例えば、下記のものを作製可能です。
- 複雑な形状の部品を固定するための治具
- 精密な測定や検査に使用するゲージ
- 組立ラインでの位置決め用のジグ など
カーボンフィラメントによる治工具は、従来の金属製のものと比べて軽量で、必要に応じて迅速に設計変更や製作が可能です。そのため、生産ラインの効率化やコスト削減に大きく貢献するでしょう。
スポーツ用具
カーボンフィラメントは、高強度と軽量性を活かし、さまざまな競技用具の性能向上に貢献しています。例えば、下記のものを3Dプリントで製作可能です。
- 自転車のフレームやホイール
- ゴルフクラブのヘッドやシャフト
- テニスラケットのフレーム
- スキーやスノーボードの部品 など
3Dプリントでは、選手個人の体格や好みに合わせたカスタマイズも容易になり、従来の量産品では実現困難だった最適な設計が可能になります。また、プロトタイプの製作と検証を迅速に行えるようになるため、新しいデザインの開発サイクルが大幅に短縮されています。
宇宙ロケットや航空機の部品
宇宙ロケットや航空機の部品製造でも、カーボンフィラメントを用いた3Dプリントは有効です。その優れた強度重量比と耐熱性が評価され、従来の部品の代替として使用されています。例えば、下記のものが3Dプリントで製作可能です。
- 衛星の構造部品
- ロケットのノズル部品
- 航空機の内装パネルや非構造部品 など
宇宙空間での使用に耐えられる高い信頼性と性能を実現し、宇宙開発の進展に貢献しています。
カーボンフィラメント対応のおすすめ3Dプリンター
実際にカーボンフィラメント対応の3Dプリンターには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、おすすめの製品を8つ紹介します。
カーボン3Dプリンターに関しては、こちらの記事も参考にしてくださいね。
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Creator4S
FLASHFORGE「Creator4S」は、大型造形が可能で、カーボンファイバーから一部のスーパーエンプラまで幅広い素材に対応している高性能モデルです。独立型デュアルエクストルーダーを採用し、最大360℃のノズル温度と65℃のチャンバー温度を実現しています。多様な素材に対応しており、最終製品製造まで可能な業務用3Dプリンターです。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Creator4S |
対応素材 | PLA・ABS・PETG・PC・PA・ASA・PBAT・TPC・TPE・PVA・HIPS・PA-CF・PETG-CF・PLA-CF・TPU |
商品詳細 | 公式ページ |
Creator3 Pro
FLASHFORGE「Creator3 Pro」は、デュアルエクストルーダーを搭載し、2色成形や水溶性サポート材の使用にも対応しています。320℃の高温ノズルにより、ABS、PCなどの高機能樹脂にも対応可能です。独立した左右のノズルが特徴的で、同じ素材で色違いの印刷にも対応しています。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Creator3 Pro |
対応素材 | PLA・ABS・PA・PC・PVA・HIPS・PETG・PETG-CF・PA-CF・TPU(0.8mmノズル使用時) |
商品詳細 | 公式ページ |
Guider3
FLASHFORGE「Guider3」は、コンパクトながら高性能な単一エクストルーダー3Dプリンターです。最大320℃のノズル温度と110℃のプラットフォーム温度により、幅広い素材に対応しています。自動レベリング機能や柔軟なマグネット式プラットフォームを採用し、使いやすさと高品質な造形を両立したモデルです。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Guider3 |
対応素材 | ABS・PLA・PC・PA・ASA・PETG・PA-CF・PLA-CF・PETG-CF |
商品詳細 | 公式ページ |
Guider3 Ultra
FLASHFORGE「Guider3 Ultra」は、高精度な造形が可能な単一エクストルーダーモデルです。最大350℃のノズル温度と120℃のプラットフォーム温度を実現しています。また、0.4mmの精密ノズルと高剛性フレームにより、細部まで正確な造形が可能です。研究開発や精密部品の製造に適しています。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Guider3 Ultra・ |
対応素材 | PLA・PETG・ABS・ASA・PA・PC・PLA-CF・PETG-CF・PA-CF※一部抜粋 |
商品詳細 | 公式ページ |
FX20
Markforged「FX20」は、大型の高温チャンバー3Dプリンターです。最大200℃のチャンバー温度により、カーボンファイバーのほかに、高性能熱可塑性材料のULTEM™ 9085フィラメントが使用可能です。航空宇宙、自動車産業向けの大型部品製造に適しており、金属部品の代替品製作が可能です。
メーカー・製品名 | Markforged・FX20 |
対応素材 | Onyx™・Onyx FR™・カーボンファイバー・ULTEM™ 9085※一部抜粋 |
商品詳細 | 公式ページ |
FX10
Markforged「FX10」は、高温材料に特化した中型3Dプリンターです。60°Cまで加熱可能なヒートチャンバーを搭載しており、高速で高品質な部品の印刷を実現しています。産業用途や研究開発に適しており、高強度・高耐熱性の部品製造に最適です。
メーカー・製品名 | Markforged・FX10 |
対応素材 | Onyx™・カーボンファイバー |
商品詳細 | 公式ページ |
X7
Markforged「X7」は、カーボンファイバーを含む4種類の長繊維に対応した3Dプリンターです。UL94規格のV-0レート認証を取得した難燃性素材「Onyx FR™」にも対応しており、航空宇宙産業、自動車産業、防衛産業など、高い難燃性が求められる部品の造形に対応しています。
メーカー・製品名 | Markforged・X7 |
対応素材 | Onyx™・Onyx FR™・Onyx ESD™、Nylon White・Precise PLA・Smooth TPU 95A・カーボンファイバー・ファイバーグラス・Carbon Fiber FR・Aramid Fiber (Kevlar®) ケブラー・HSHT ファイバーグラス ※一部抜粋 |
商品詳細 | 公式ページ |
Mark Two
Markforged「Mark Two」は、カーボンファイバーに対応したデスクトップ型3Dプリンターです。プラスチック素材であるOnyx™などで外部を覆いつつ、内部を連続的なカーボンファイバーで補強する技術を用いて、強度、剛性、耐久性に優れた製品の造形を実現しています。
メーカー・製品名 | Markforged・Mark Two |
対応素材 | Onyx™・Nylon white・Smooth TPU95A・Precise PLA・カーボンファイバー・ファイバーグラス・Aramid Fiber (Kevlar®)ケブラー・HSHT ファイバーグラス ※一部抜粋 |
商品詳細 | 公式ページ |
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まとめ
高強度、美しい仕上がり、寸法安定性という優れた特性を持つカーボンフィラメントは、金属パーツの代替品、治工具など、幅広い分野で活用されています。最新の3Dプリンターを用いれば、カーボンフィラメントの特性を最大限に引き出せるでしょう。
3Dプリンターでカーボンフィラメントを用いた造形を検討されている方は、本記事で紹介したメリット、デメリットも参考になさってください。なお、弊社ではカーボン3Dプリンターの導入サポートを行っております。貴社の目的に合う機種を提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。