3Dレーザースキャナーで測量業務を効率化!業界別活用方法も紹介
- 3Dスキャナー
- 2024.9.19
- 導入事例 メリット・デメリット
測量業務に携わっている人や企業が注目しているのが3Dレーザースキャナーです。高精度なデータを素早く集められるため、測量業務の効率化に大きく貢献しています。従来の測量方法と比べ、作業効率が大幅に向上し、複雑な形状も正確に捉えられるため、多くの企業で採用されているのです。
本記事では、3Dレーザースキャナーの基本から業界別の活用事例やそのメリット・デメリットまで詳しく解説します。測量業務の効率化を考えている方は、最後までご覧ください。
目次
3Dレーザースキャナーとは
3Dレーザースキャナーは、レーザー光を使用して対象物の形状や寸法を高精度で計測し、三次元データとして取得する革新的な機器です。この装置は、秒間数十万〜数百万点のレーザーを照射するため、短時間で広範囲の詳細なデータを収集できます。
装置から発射されたレーザー光が対象物に反射して戻ってくるまでの時間から、距離を算出します。同時に、レーザーの照射角度も記録することで、各測定点の三次元座標を特定していくのです。
取得されたデータは、専用ソフトウェアで処理され、精密な3Dモデルや断面図、等高線図などを作成できます。この技術により、従来の測量方法では困難だった複雑な形状や大規模な構造物の測量が可能となり、建築、土木、防災など多岐にわたる分野で活用されています。
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業界別3Dレーザースキャナー活用事例
ここからは3Dレーザースキャナーの活用事例を、以下の5つの業界に着目して詳しく見ていきます。
建築
建築業界では、3Dレーザースキャナーが設計から施工、維持管理まで幅広く活用されています。
設計段階では、既存建物の正確な3Dモデルを作成し、リノベーションや増築の計画に利用します。複雑な形状や細部まで精密に捉えられるため、従来の手作業による測量では見落としがちだった部分も漏れなく把握可能です。
施工段階では、建設現場の進捗管理に活用されます。定期的にスキャンすることで、設計図との差異をリアルタイムで確認し、早期に問題を発見・修正できます。また、測定したデータはすぐにネットワークを介して共有できるため、離れた場所からでも施工現場の管理が可能です。また、完成後は、建物の経年変化や損傷状況を正確に記録し、効率的な維持管理に役立てられます。
土木
土木分野では、3Dレーザースキャナーが広範囲の地形測量や構造物の調査に革新をもたらしています。道路や橋梁の設計・施工では、既存の地形や構造物を高精度でスキャンし、詳細な3Dモデルを作成します。設計の最適化や精度の高い施行計画を実現するには、3Dモデルは欠かせない存在です。
また、トンネル工事では、掘削の進捗管理や出来形確認に活用されています。狭小で暗い空間でも正確に測量できるため、トンネル内の状況を安全に素早くデータ化することが可能です。河川や海岸の管理では、堤防や護岸の形状変化を定期的にスキャンすることで、浸食や堆積の状況を把握し、適切な対策立案に役立てています。
このように、3Dレーザースキャナーは土木分野において、精度向上、作業効率化、安全性向上など多面的な利点をもたらし、インフラ整備や維持管理の質を飛躍的に高めています。
防災
防災分野では、3Dレーザースキャナーが災害対策や被害評価に大いに役立っています。災害前の対策として、地形や建造物の詳細な3Dモデルを作成し、洪水や土砂災害のシミュレーションに活用されます。3Dモデルが作成されることで、より精密なハザードマップの作成や避難計画の立案が行われるのです。
災害発生時には、被災地の迅速かつ正確な状況把握に威力を発揮します。例えば、地震後の建物の傾きや地盤の変位を高精度で測定できるため、二次災害のリスク評価に役立ちます。さらに、復旧・復興計画の策定にも活用され、被災前後の3Dデータを比較することで、効果的な再建計画に貢献できるでしょう。
このように、3Dレーザースキャナーは防災サイクルの各段階で重要な役割を果たし、社会の安全性向上に役立っています。
文化財の保護
3Dレーザースキャナーは、貴重な文化財の保護にも役立っています。製作から長い年月を経て劣化の激しい状態の文化財であっても、3Dレーザースキャナーでデータ化し、3Dモデルを作成可能です。
歴史的建造物や遺跡の詳細な3Dモデルを作成すれば、正確な記録と保存が可能となり、将来の修復や再建のための貴重なデータを残せます。また、通常の目視では確認しづらい微細な損傷や経年変化も、高精度なスキャンデータから検出できるため、早期の保全対策や適切な修復計画の立案に役立ちます。
さらに、3Dモデルを活用した仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術との組み合わせにより、一般公開が難しい文化財であったとしても、本物を見ているかのような新たな展示方法も実現されました。このように、3Dレーザースキャナーは文化財の保護と活用の両面で、新たな可能性を切り開いているのです。
農業
近年、農業分野では「スマート農業」と呼ばれる手法が広まっています。これは、3Dレーザースキャナーを搭載したドローンや、ICTを活用して行われる農業です。
3Dレーザースキャナーを用いて測量された地形は、土地活用の最適化をもたらし、農業機械の自動運転にも活用されています。ドローンと組み合わせて広範囲の3Dマッピングを行えば、作物の生育状況や病害虫の発生を早期に把握できるでしょう。離れた場所からでも確認できるため、農業従事者の作業負荷を減らすことにつながります。
高齢化と労働者不足が問題となっている農業では、生産性の向上や効率化をもたらす3Dレーザースキャナーは、救世主的存在といえるかもしれません。
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測量はどのように行われる?
3Dレーザースキャナーによる測量はどのように行われるのでしょうか。従来の測量の方法と比べて解説します。
従来の測量の方法
従来の測量は、主にトータルステーションやGNSS測量機を用いて行われてきました。
トータルステーションは、距離と角度を測定し、三角測量の原理で位置を特定します。測量者が機器を操作し、ポイントごとにデータを取得するため、時間と労力がかかってしまいます。
一方で衛星からの信号を受信し、高精度な位置情報を得られる機材がGNSS測量機です。衛星からの信号が必要であるため、住宅密集地や樹木が多い場所ではうまく観測できません。
このような方法は、測定点ごとに個別の作業が必要なため、広範囲や複雑な形状の測量には多大な時間がかかってしまいます。また、測量者の技術や経験に依存する部分も大きく、人為的なミスの発生もゼロではありません。
3Dレーザースキャナーを用いた測量の方法
3Dレーザースキャナーによる測量は、測量対象に向けて機器を設置し、レーザーを照射することで行われます。レーザーは秒間数十万〜数百万点照射され、短時間で多くの場所の測定が可能です。
死角になっている場所では、装置の置き場所を変え、複数の位置からスキャンを行います。それでも従来の測量と比べれば、広範囲の測量を高精度・短時間で行うことが可能です。
取得したデータは「点群データ」として保存され、専用ソフトウェアで処理します。測定時にノイズが入っていた場合はここで除去され、座標の補正も簡単に行えます。そこから最終的に、精密な3Dモデルや各種図面が作成され、多様な分析や設計に活用されるのです。
このように、3Dレーザースキャナーは測量の概念を一新し、業務効率を飛躍的に向上させているのです。
3Dレーザースキャナーで測量を行うメリット・デメリット
では3Dレーザースキャナーで測量を行う際のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3Dレーザースキャナーで測量を行うメリット
3Dレーザースキャナーで測量を行う際の代表的なメリットは、下記の5つです。
- 1度の作業で広範囲の測量ができる
- さまざまな現場でも手軽に測量できる
- データを管理しやすく、手戻りも少ない
- 複雑な形状にも対応している
- 人通りの多いところでも測量できる
一つひとつ解説していきます。
1度の作業で広範囲の測量ができる
3Dレーザースキャナーの最大のメリットは、広範囲を一度に測量できることでしょう。測定点ごとに個別の作業が必要だった従来の方法に対し、3Dレーザースキャナーを用いれば、秒間で数十万点から数百万点もの測定が可能です。
一度の計測で数十〜数百メートルの範囲を測量できる機種や、360度回転しながらデータを取得できる機種もあるため、河川や山間部といった広大な敷地でも、全体の測量を短時間で終わらせられます。
さまざまな現場でも手軽に測量できる
3Dレーザースキャナーを用いれば、従来の方法では測量が困難だった場所でも、手軽に測量が可能です。例えば、高所や危険地帯での測量であっても、遠隔から操作を行い安全にデータを取得できます。
また、夜間や照明の乏しい場所であっても測定ができるため、トンネル内や光の入ってこない暗所であっても精度を落とさずに測量可能です。このように、3Dレーザースキャナーによって、これまで諦めていたような現場でも、手軽に測量ができるようになりました。
データを管理しやすく、手戻りも少ない
3Dレーザースキャナーで測量を行った場合、取得したデータはデジタル形式で保存されます。そのため、長期保管が簡単になり、クラウドサービスを活用すれば、リアルタイムでの情報共有も可能です。
また、一度の測定で大量のデータを測定できるため、何度も現場に足を運ぶ必要もありません。必要な情報を後から抽出できるので、測り忘れによる手戻りも最小限に抑えられます。
仮にノイズや測定不良があったとしても、後からソフトを使って修正することも可能です。3Dレーザースキャナーを用いてデジタルデータ化すると、管理と効率化の両方が実現できます。
複雑な形状にも対応している
これまでの測量方法では、曲面や入り組んだ構造を持っている対象物を測定するのは困難でした。
3Dレーザースキャナーであれば、レーザーが隅々まで届くため、複雑な形状でも測量が可能です。例えば、歴史的建造物の装飾や自然の地形といった不規則な形状であっても、高い精度で測定できます。
大規模な工業プラントや複雑な配管系統であっても、正確にデータを取得し、3Dモデル化できるため、設備の改修や保守計画に役立ちます。3Dレーザースキャナーの登場により、複雑な形状を持つ対象物もデジタルデータ化が可能となり、さまざまな業界で活用されるようになりました。
人通りの多いところでも測量できる
従来の測量では、通行人や車両の行き来のたびに、作業を中断せねばならず、どうしても時間がかかってしまいました。3Dレーザースキャナーを用いた測量は、短時間で多くのデータが取得できるため、通行人や車両の行き来の影響を受けずらいのです。
また、同じ個所で複数回スキャンを行えば、あとから通行人や車両といった移動する物体を除去することも可能です。混雑した都市部や商業施設でも、正確な測量ができるようになりました。
3Dレーザースキャナーで測量を行うデメリット
一方で、3Dレーザースキャナーで測量を行う際に、注意しておきたいデメリットもあります。
- 価格が高い
- 雨天や濃霧などの影響も受けやすい
代表的な2つのデメリットについて見ていきます。
価格が高い
3Dレーザースキャナーの導入を検討する際に、最もネックになるのが価格です。高性能な3Dレーザースキャナーの価格は、数百万円から数千万円と高くなります。従来の測量機器と比べた場合、かなりの初期投資が必要です。
また、スキャナー本体だけでなく、データ処理用の高性能コンピュータや専用ソフトウェアも必要です。周辺機器や設備も含めると、初期投資はさらに膨らんでしまいます。ただし、長期的には作業効率の向上やコスト削減につながるため、導入する際には、費用対効果を十分に検討するようにしましょう。
雨天や濃霧などの影響も受けやすい
3Dレーザースキャナーは、レーザー光を利用して測量を行うため、雨天や濃霧の環境下では測定精度が著しく低下してしまう恐れがあります。なぜなら、レーザー光が水滴や霧粒子によって、反射してしまうことがあるからです。
また、強い日差しや照り返しが、レーザー光の感知を妨げるというケースも存在します。従来の測量方法と比べると、天候の影響を受けやすいという側面があるため、天気予報などを活用して、計画的に測量を行うことが求められます。
まとめ
本記事では、3Dレーザースキャナーの測量業務における効率化と活用方法を紹介しました。建築、土木、防災など様々な業界での具体的な活用事例を取り上げ、広範囲の測量や複雑な形状の捕捉、データ管理の容易さなど、そのメリットを詳しく解説しています。
ただ、高価格や気象条件による制限といったデメリットも存在するため、3Dレーザースキャナーの導入には、事前に検討しておくことが重要です。3Dレーザースキャナーを測量業務で活用されたい方は、メーカーの購入前相談を利用するなどして、納得の上、導入するようにしましょう。