3Dレーザースキャナーとは?仕組みや測定原理とメリット・デメリットも解説
- 3Dスキャナー
- 2024.10.7
- メリット・デメリット
3Dレーザースキャナーは、レーザー光を用いて対象物の形状を高精度に計測し、3次元データとして取得する装置です。建築、土木、製造業など幅広い分野で活用され、複雑な形状も短時間で正確に測定できる革新的な技術として注目を集めています。
本記事では、3Dレーザースキャナーの基本的な仕組みや測定原理を解説するとともに、メリットとデメリットについて詳しく説明します。さらに、代表的な測定原理や価格相場、よくある質問なども紹介するので、3Dレーザースキャナーの全体像を把握できるでしょう。
3Dレーザースキャナーの導入を検討している人は、ぜひ最後までご覧下さい。
目次
3Dレーザースキャナーとは
3Dスキャナーは、対象物をスキャンして3Dデータを取得する装置です。種類は、主に下記の2つに分けられます。
- プローブなどを利用して直接対象物に触れて測定する接触式
- 光などを利用した非接触式
このうち3Dレーザースキャナーは、非接触式に分類され、その反射光を受信することで、対象までの距離や角度を計算します。測定された情報を組み合わせることで、対象物の3Dモデルが生成されるのです。
取得したデータはCADソフトウェアなどと連携して活用できるため、設計や品質管理、メンテナンスなどさまざま用途に合わせて利用可能です。
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3Dレーザースキャナーの仕組み
3Dレーザースキャナーは、主に下記の2つで構成されています。
- 対象物にレーザー光を照射する部分
- 反射したレーザー光を検出する受光部
レーザー光を用いて測定するため、測定物を直接触ることなくスキャンできるのが特徴です。はじめに3Dレーザースキャナーから照射されたレーザー光は、測定物に当たり、スキャナーに向けて反射されます。この反射光をセンサーやカメラなどで受光し、角度や距離を測定します。
この測定を繰り返し、複数点を測定することで、測定物の形状を3Dデータとして取得できるのです。
3Dレーザースキャナーの測定原理
ここからは、3Dレーザースキャナの測定原理を以下の4種類に分けて解説します。
- タイム・オブ・フライト(TOF)方式
- フェーズシフト方式
- 光投影法
- レーザー切断方式
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
タイム・オブ・フライト(TOF)方式
タイム・オブ・フライト(TOF)方式は、レーザー光を対象物に照射し、その光が反射して戻ってくるまでの時間を計測することで距離を算出する測定方法です。光の速度は決まっているため、レーザー光が照射されてから反射され、受光するまでの往復時間から正確な距離を計算できます。
TOF方式は広範囲のスキャンや複雑な形状の測定に適しており、建築や土木工事、大規模な工業施設の測定によく使用されている手法です。この方式は、長距離の測定に特に優れている一方で、細部の精度は他の方式に比べてやや劣る場合があります。
フェーズシフト方式
フェーズシフト方式は、3Dレーザースキャナーの測定原理の一つで、高精度な距離測定が可能な技術です。この方式では、変調されたレーザー光を対象物に照射し、反射して戻ってきた光の位相変化を測定します。発射されたレーザー光と反射光の位相差を利用して、対象物までの距離を計算します。
長距離の測定や複雑な形状の測定に適しているフェーズシフト方式は、航空測量や製造業、医療分野など幅広い領域で有効です。非常に高い精度での測定が可能であるため、精密な3次元データが必要とされる場面で重宝されています。
光投影法
光投影法は、特定のパターンを持つ光(構造化光)を対象物に投影し、その反射光をカメラで撮影して解析して、対象物の形状を測定する手法です。投影されたパターン光が対象物の表面で歪むため、その歪みを分析することで表面の凹凸や形状を高精度に再現できます。
光投影法の特徴は、高速でスキャンが可能であり、複雑な形状も正確に捉えられることです。また、カラーデータを取得できるというメリットもあります。ただし、明るい環境下では精度が低下する可能性があります。主に小型から中型の対象物の測定に適しており、製造業や医療分野などで広く活用されています。
レーザー切断方式
レーザー切断方式では、スリット状のレーザー光を対象物に照射し、可視光を投影して計測する方式です。三角測量の原理を用いて対象物の形状を再現するため、高い精度での計測が可能です。特に、明るい環境下での使用や光沢のある物体の計測に適しており、他の方式では難しい条件下でも正確なデータを取得できます。
一方で、計測に時間がかかるというデメリットがありますが、その分詳細かつ高精度なデータ取得が可能です。製造業や精密機器の分野で特に重宝されており、複雑な形状や微細な部品の計測に適しています。
3Dレーザースキャナーのメリット
3Dレーザースキャナーがさまざまな分野で使用されているのは、下記のようなメリットがあるからです。
- 広範囲を一度に測定できる
- 従来の方法では困難だった場所でも測定できる
- 複雑な形状にも対応している
それぞれについて具体的に解説します。
広範囲を一度に測定できる
3Dレーザースキャナーの大きなメリットの一つは、広範囲を一度に測定できることです。従来の測量方法と比較して、はるかに効率的にデータを収集できます。複雑な構造物や広大な敷地全体であっても、短時間で正確な計測が可能です。
取得した点群データは、専用ソフトウェアで結合し、広範囲の3Dモデルを作成することもできます。この広範囲測定の技術は、都市計画、建設プロジェクト、文化財の保存など、さまざまな分野で活用されており、作業時間の短縮とコスト削減に大きく貢献しています。
従来の方法では困難だった場所でも測定できる
二つ目のメリットは、従来の測量方法では困難だった場所でも測定できることです。高所や狭いスペース、危険区域など、人が直接アクセスしにくい場所でも、レーザー光を用いて遠隔から正確に計測できます。例えば、高層ビルの外壁や橋梁の下部構造、複雑な配管が入り組んだプラント内部などを、地上から安全に測定することが可能です。
また、暗所や水中など、通常の視認が難しい環境下でも測定が可能なため、トンネル内部や地下構造物、水中構造物などの計測も容易になりました。動いている対象物でも高速で計測できるため、工場のライン上の製品検査や交通量調査などにも活用されています。
複雑な形状にも対応している
複雑な形状であっても測定できるのも、3Dレーザースキャナーの大きなメリットです。従来の測量方法では困難だった入り組んだ構造や曲面を持つ対象物であっても、高精度に計測できます。例えば、歴史的建造物の装飾や工業製品の複雑な部品、自然物といった不規則な表面であっても計測可能です。
レーザー光が対象物の表面を細かく走査することで、微細な凹凸や曲面の形状を点群データとして取得します。手作業では再現が難しい複雑な形状も、高い精度で3Dモデル化可能です。死角になりやすい箇所も、レーザーの特性を活かして計測できるため、従来の方法では困難だった対象物でも、全体像を把握できます。
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3Dレーザースキャナーのデメリット
一方で、3Dレーザースキャナーには下記のようなデメリットも存在します。
- 光沢のある表面の計測が難しい
- 天候などの環境の影響を受ける
- 費用面と運用面のコストが高い
順番に、詳しく見ていきます。
光沢のある表面の計測が難しい
光沢のある表面の計測が難しいという点は、3Dレーザースキャナーのデメリットの一つです。光沢のある物体、特に金属製の鏡面や車のボディなどは、入射光を特定の方向に集中して反射する「鏡面反射」を引き起こしてしまいます。鏡面反射により、スキャナーが適切な反射光を受け取れず、データに欠損やノイズが生じやすくなってしまうのです。
この問題に対処するためには、対象物表面に特殊な塗料や粉末を塗布したり、複数の角度からスキャンを行うなどの工夫が必要となります。このような対策は追加の作業や時間を要するため、プロジェクトの進捗に影響を与えてしまうでしょう。
天候などの環境の影響を受ける
3Dレーザースキャナーは、屋外での使用時に天候などの影響を受けやすいというデメリットがあります。特に、雨天時や降雪時、粉塵が多い環境下では計測データの品質が低下してしまう場合があります。雨粒や雪片、粉塵がレーザー光を遮断したり反射したりすることで、正確な距離測定が困難になるためです。
また、直射日光の強い環境下では、レーザーの反射率が変化し、計測精度が低下する可能性があります。さらに、気温や湿度の変化、風や振動なども測定結果に影響を与える要因となります。屋外での計測を行う際は、天候や環境条件を十分に考慮し、適切な時間帯や条件下で計測を実施することが重要です。
費用面と運用面のコストが高い
3Dレーザースキャナーの導入には、高額な初期投資が必要です。高性能な機器ほど価格が高く、数百万円から1,000万円以上する場合もあります。また、専用のデータ処理ソフトウェアやハイスペックなコンピューター、大型ディスプレイなどの周辺機器も必要となり、これらの費用も考慮しなければなりません。
運用面では、専門的な知識を持つオペレーターの育成や雇用にコストがかかります。さらに、データ処理やモデリングには時間と労力を要し、作業に伴う人件費も発生します。機器のメンテナンスや定期的なキャリブレーション、ソフトウェアのアップデートなどの継続的なコストも想定しておかなければなりません。
3Dレーザースキャナーの価格はどれくらい?
3Dレーザースキャナーの価格は、その種類や性能によって大きく異なります。家庭用の3Dレーザースキャナーで10万円前後から、業務用だと安価なものでも数十万円程度から始まり、高性能なモデルになると1,000万円を超えるものもあります。価格は精度、測定範囲、スキャン速度などの性能に応じて上昇します。
3Dレーザースキャナーの価格を詳しく知りたい方は、下記のページもご覧ください。
【価格別】3Dスキャナーのおすすめ8選!安い価格で導入できるのはどれ?
本体以外にも必要な価格とは
3Dレーザースキャナーを導入する際、本体価格以外にも考慮すべき費用があります。まず、データ処理ソフトウェアの購入やライセンス料が必要です。高度な機能を持つソフトウェアであれば、高額になる場合もあります。次に、高性能なコンピューターや大型ディスプレイなどのハードウェアも必要です。これらは3Dデータの処理や表示に不可欠です。
スキャン環境の整備費用も考慮しなければなりません。適切な照明設備や防振対策、場合によっては専用の部屋なども必要になるでしょう。さらに、オペレーターの教育・訓練費用や、定期的なメンテナンス、キャリブレーション費用も忘れてはいけません。
これらの付随費用は、導入時の初期費用だけでなく、運用を続ける上での継続的なコストとなるため、長期的な視点で予算を立てることが重要です。
少しでも価格を押させて使用するには
3Dレーザースキャナーの価格を抑えて使用するには、いくつかの方法があります。まず、レンタルやリースの活用を検討しましょう。初期投資を抑えられるだけでなく、最新機種を試せるメリットもあります。中古品の購入も選択肢の一つですが、メーカー保証がつかないといったデメリットがあるため、おすすめしません。
もし、複数の企業や機関で共同購入できるのであれば、シェアして使用する方法もあります。コストを分散させつつ、高性能な機器を導入できるでしょう。クラウドベースの3Dスキャンサービスを利用するのもいいでしょう。必要な時だけサービスを利用することで、機器の購入や維持管理のコストを削減できます。
地域や業種によっては、3Dレーザースキャナー導入に対する支援制度がある場合もあるので、助成金や補助金の情報はチェックするようにしましょう。
レーザースキャナーに関してよくある質問
ここからは、お客様からよくあるレーザースキャナーに関する質問についてお答えします。
レーザースキャナーとLiDARの違いは?
レーザースキャナーとLiDAR(Light Detection and Ranging)は、どちらもレーザー光を用いて対象物の距離や形状を測定する技術です。両者の主な違いは用途と測定範囲にあります。
レーザースキャナーは主に静止した状態で使用され、建築物や工業製品など比較的近距離の対象物を高精度で測定します。一方、LiDARは移動しながらの測定に適しており、自動運転車両や航空測量など、より広範囲の測定に使用される装置です。
3Dレーザースキャナーとドローンはどっちがいい?
3Dレーザースキャナーとドローンは、どちらも測量や3Dデータ取得に使用されますが、それぞれに長所と短所があります。
3Dレーザースキャナーは、高精度な測定ができ、建物内部や複雑な構造物などの詳細なデータを取得可能です。一方、ドローンは広範囲を短時間で測量でき、アクセスが困難な場所のデータ取得や、広大な土地や地形の測量に適しています。
最近では、両者を組み合わせて使用するケースも増えています。例えば、ドローンで広域のデータを取得し、重要な箇所を3Dレーザースキャナーで詳細に測定するという方法です。このように、それぞれの長所を活かした使用方法が採用される場合もあります。
まとめ
本記事では、3Dレーザースキャナーの基本的な仕組みや測定原理、メリット・デメリットについて詳しく解説しました。高精度な3D計測を可能にしたこの技術は、建築、土木、製造業など幅広い分野で活用されています。一方で、導入コストの高さや環境条件による制約といった課題もあります。
3Dレーザースキャナーの選択や導入を検討する際は、用途や予算に応じて適切な機種を選び、総合的なコストを考慮することが重要です。3Dスキャナーの導入をご検討中の方は、お気軽に弊社にご相談ください。
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