3Dプリンターに使用できる樹脂素材は?その特徴と選び方を解説
- 3Dプリンター
- 2024.5.20
- フィラメント メリット・デメリット
樹脂素材にはABS・PLAなどの熱溶解積層方式用のフィラメントや、
エポキシ樹脂・アクリル樹脂などの光造形方式用の液体樹脂のさまざまな種類があります。
樹脂素材はそれぞれ特徴が異なるため、用途や目的に応じて選ぶことが大切です。
とはいえ初心者の方にとって、樹脂素材の選び方は少し難しく感じるかもしれません。
この記事では3Dプリンター用樹脂素材の種類や特性、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
この記事を読んで、用途にぴったりな樹脂素材を見つけましょう。
目次
熱溶解積層方式の3Dプリンター用フィラメント
熱溶解積層方式の3Dプリンターに使われるフィラメントは、下記のとおりです。
- ABS樹脂
- PLA樹脂
- PET
- PETG
- TPU
- TPE
- ナイロン
- PC
- PP
- PS
上記の樹脂素材は全て特性が異なるため、用途に合わせて使い分けることが大切です。
それぞれの特性や用途を見ていきましょう。
ABS樹脂
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂は、3Dプリンターで使われる素材の中でも代表的な樹脂素材です。
熱溶解積層方式をはじめとして、多くの3DプリンターがABS樹脂に対応しています。
レゴブロックにも使われているように、強度と耐久性に優れているのが特徴です。
その他にも耐衝撃性や耐摩耗性、耐熱性などにも優れています。
ただし熱で収縮したり、冷却時に反りやすい欠点があり、大きいサイズの造形物のプリントには向いていません。
PLA樹脂
PLA(ポリ乳酸)樹脂も、3Dプリンターで使われる代表的な樹脂素材の一つです。
初心者にも扱いやすく、手軽に3Dプリントを始められる素材として知られています。
PLA樹脂は植物由来の材料からできているため環境にやさしく、印刷時に匂いが少ないのが特徴です。
また、造形物の表面はツルツルとしていて、美しく仕上がります。
このような特徴から模型やおもちゃなど、さまざまな用途に適しています。
ただし、強度や耐久性はABS樹脂に比べて劣り、高温で変形しやすいため、屋外で使用するものには向いていません。
PET
PET(ポリエチレンテレフタラート)は、ペットボトルの材料としてよく知られている樹脂素材です。
透明度が高くて耐水性や耐薬品性、適度な強度、柔軟性を備えているのが特徴です。
このような特性からキッチン用品や水回りで使用する部品、医療用具の一部などの用途に適しています。
ただし印刷温度が比較的高く、熱で変形しやすいため、冷却設定に注意する必要があります。
また、吸湿しやすいため使用前は十分に乾燥させなければいけません。
PETはABS樹脂やPLA樹脂と異なる特性を持っているため、用途に応じて使い分けることで、幅広いプロジェクトに対応できるでしょう。
PETG
PETG(ポリエチレンテレフタラートグリコール)はPETの一種で、
PETにエチレングリコールを添加して、PETの特性を改善した素材です。
PETよりも耐衝撃性が高くて割れにくく、扱いやすい特徴があります。
3Dプリンターの材料としても、人気があります。
このような特徴から機械部品や工具などの耐久性が必要な製品やコスプレ衣装の小道具の製作など使われる場面はさまざまです。
PETGはPETの特性を維持しつつ、PLA樹脂とABS樹脂の中間的な特性を持っているため、あらゆる用途に対応できる万能素材とも言えます。
TPU
TPU(ポリエチレンテレフタラートグリコール)は、ゴムのように柔軟性と弾力性を持っており、耐摩耗性や耐油性に優れているのが特徴です。
また、層間接着性が高いため、強度の高い造形物を製作できます。
このような特性からスポーツシューズのアッパーやソール、スマホカバーなど柔軟性が求められるものの材料に適しています。
ただし印刷速度が比較的遅く、短時間では印刷できません。
ノズルが詰まりやすいデメリットもあり、適切な温度設定が重要になります。
TPE
TPE(熱可塑性エラストマー)はTPUと同じように、柔軟性と弾力性、耐摩耗性、耐油性に優れた素材です。
ゴムのような特性があり、TPUよりも柔らかく、伸縮性に優れています。
TPEとTPUは似ていますが、材料や組成に違いがあるため、用途に応じて使い分けることが大切です。
一般的にTPUは耐摩耗性や耐油性が求められる用途に、TPEは柔軟性や伸縮性が求められる用途に適しています。
ただし、材料の特性は製品によって異なるため、詳しくはメーカーの商品ページで確認しましょう。
ナイロン
ナイロンはポリアミドと呼ばれる合成樹脂の一種で、強度や耐久性、柔軟性に優れた素材です。
軽量で、重量あたりの強度が強いという特性もあります。
このような特性から3Dプリンターでは、機械部品や工具などの高い強度が必要な製品の製作や、
ロボットのような軽量化が必要な部品などの材料として使われています。
また、日常生活では、衣類や釣り糸などに広く使われている素材です。
ただしナイロンは印刷温度が高く、変形しやすいため、冷却設定に注意が必要です。
ナイロンを使いこなすには特性を知って、適切な印刷設定を行いましょう。
PC
PC(ポリカーボネート)はCDやDVDディスク、メガネなどに使われる素材で、高い強度と耐熱性、透明性を持ちます。
難燃性があり、火災の危険性が低いのも特徴の1つです。
このような特性から3Dプリントでは、自動車や航空機に必要な部品や電子機器の絶縁部品など安全性が重視される用途に適しています。
ただし、PCには印刷温度が高く、反りが発生しやすいなどのデメリットがあるため取り扱いが難しく、造形する際は設定に気をつけなければいけません。
PP
PP(ポリプロピレン)は、他の樹脂に比べて非常に軽量な素材です。
その他にも耐薬品性や耐熱性、柔軟性、耐衝撃性に優れています。
PPは低吸水性で水分の影響を受けにくいため、湿気の多い環境で使用しても問題ありません。
このような特性を活かして3Dプリントでは、食品容器や包装材のような軽量化が必要な製品や、
おもちゃのような安全性が求められる製品などの材料に使われています。
ただし印刷温度が高くて積層接着性が弱いため、層間剥離が起こりやすいのが難点です。
PS
PS(ポリスチレン)は剛性と硬度に優れ、比較的安価で入手しやすい素材です。
PSで作った造形物は光沢があり、表面が滑らかに仕上がります。
そのため、建築模型やディスプレイ用品などのデザイン性が求められる製品の造形に用いられています。
その一方で熱や衝撃に弱い性質があり、急激な温度変化を受けると反りが起こりやすいのが難点です。
また、スチレンモノマーの揮発による強い臭いを発生する場合があり、使用時は適切な換気を行わなければいけません。
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光造形方式の3Dプリンター用の液体樹脂
光造形方式の3Dプリンターには、液体樹脂が材料として使用されます。
- エポキシ樹脂
- アクリル樹脂
- PU
- シリコーン樹脂
それぞれの特性や適した用途を見ていきましょう。
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、光造形方式で使われる液体樹脂の一種です。
強度や硬度、耐久性、耐熱性、耐薬品性に優れ、過酷な環境下で使用しても問題ありません。
また、エポキシ樹脂で作った造形物の表面は、滑らかで高精度です。複雑な形状の造形にも対応しています。
そのためエポキシ樹脂は歯科用モデルやインプラント、ジュエリーの試作など高精度な造形が求められる場面に適しています。
しかし、強度や耐熱性が低いので、最終製品には適していません。
なおエポキシ樹脂の取り扱いには、注意が必要です。
皮膚に付着すると刺激を与える恐れがあるため、使用時は手袋を装着しなければいけません。
アクリル樹脂
アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と同じように液体樹脂の一種です。
アクリル樹脂は透明性が高く、着色が容易なため色鮮やかな造形にも対応しています。
また、硬化速度が早いため造形時間が短いうえに、価格が比較的安価な点もメリットです。
このような特性を活かしてアクリル樹脂は、彫刻や照明器具、レンズの試作品製作に適しています。
ただし、長時間紫外線に当たると変色や劣化が進む恐れがあります。
なお、エポキシ樹脂と同じように未硬化のアクリル樹脂の取り扱いには注意が必要で、換気のできる環境で作業しなければいけません。
PU
PU(ポリウレタン)は、柔軟性や弾力性を持つゴムのような性質の素材です。
硬度を調整でき、用途に合わせて柔らかさを調整できます。
その他にも耐摩耗性や耐衝撃性、耐油性、耐薬品性に優れているのが特徴です。
TPUと同じくポリウレタンを主成分とした材料ですが、PUは紫外線で硬化するのに対して、TPUは加熱によって溶解して冷却で硬化するといった違いがあります。
また、PUは、TPUよりも高い柔軟性と伸縮性を持っているところも異なる点です。
このような特性を活かしてPUは、靴底やインソール、グリップなどの柔軟性が求められる用途に最適です。
医療用モデルや義肢の一部として使われることもあります。
ただし、硬化後の樹脂は引き裂きに弱いため、尖ったものとの接触には気を付けなければいけません。
シリコーン樹脂
シリコーンは液体樹脂の一種で、柔軟性や伸縮性に優れており、変形に強い素材です。
耐熱性や耐寒性にも優れているため、過酷な環境下でも耐えられます。
また、生体適合性が良いことから医療用途に適しており、医療用モデルや手術用のトレーニングキット、柔軟な義肢などの製作に使われています。
ただし、シリコーン樹脂は他の素材との接着が難しいため、用途に合わせて素材を選ぶことが大切です。
3Dプリンターに使用する樹脂素材の選び方
初心者の方は、まずは使用する3Dプリンターの造形方式に対応している樹脂素材を選びましょう。
例えば熱溶解積層方式ならABS、PLA、PETG、ナイロンなどのフィラメントを、
光造形方式ならエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの液体樹脂を選びます。
そのうえで、用途に適した特性とコストのバランスが取れた樹脂を選ぶと良いでしょう。
例を挙げると、医療用モデルは柔軟性と伸縮性が必要なので、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂が適しています。
もし樹脂素材選びに悩んだときは、3Dプリンターのメーカーや販売店、経験者に相談すると良いでしょう。
もちろん弊社にもお気軽にご相談ください。
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まとめ
3Dプリンター用の樹脂素材は、大きく下記の2つに分類されます。
- 熱溶解積層方式の3Dプリンター用フィラメント
- 光造形方式の3Dプリンター用の液体樹脂
樹脂素材の種類が多く、特性もさまざまです。樹脂素材を選ぶ際は、用途に応じた特性、
3Dプリンターの造形方式との適合性、造形精度、コストなどを考慮することが重要です。
初心者の方は使用する3Dプリンターに合った材料から始め、徐々に他の材料にチャレンジしていくと良いでしょう。
本記事が、3Dプリンター用樹脂素材の選び方の参考になれば幸いです。
弊社では3Dプリンターの導入サポートも行っておりますので、機器選びの際は材料に関してもお気軽にご相談ください。