3Dスキャナースプレーを使うべき理由とは?メリット・デメリットを解説
- 3Dスキャナー
- 2024.8.26
- SCANTECH
3Dスキャナーで高精度なデータを取得したいのに、対象物の色や材質が原因でうまくいかず、頭を抱えている人もいるのではないでしょうか。これらの問題を解決するには、3Dスキャナースプレーが有効です。
3Dスキャナースプレーは、対象物の表面に吹き付けることで、光の反射率を均一化し、スキャナーが正確に形状を読み取れるようにしてくれます。この記事では、3Dスキャナースプレーが必要な理由、種類、メリット・デメリット、使い方、そして代用品まで詳しく解説します。3Dスキャンを効率的に使いたい人や、質の高いデータを取得したい人は、最後までご覧ください。
目次
3Dスキャナースプレーとは?
3Dスキャナースプレーは、3Dスキャナーを使用して対象物をスキャンする際に、その表面に塗布する特殊なスプレーです。スプレーを使用しなくても、3Dスキャナーで対象物のスキャンはできますが、表面の色や形状によっては精度の高いデータが取得できない場合があります。3Dスキャナースプレーを使用すれば、対象物の表面を均一化できるため、精度の高いスキャンが行えるようになります。
3Dスキャナースプレーが必要な理由
3Dスキャナーは、光やレーザーを照射し、その反射光を基に対象物の形状を計測します。しかし、光沢のある表面や黒色など光を吸収しやすい色は、光が正しく反射せず、正確なデータが取得できません。また、細かい凹凸のある表面も、光の乱反射を引き起こしてしまうため、ノイズの多いデータとなってしまいます。
そこで活躍するのが3Dスキャナースプレーです。スプレーを塗布することで、対象物の表面に均一なコーティングが形成され、光の反射率を安定させます。また、凹凸のある表面も改善されるため、光の乱反射を抑えられます。これにより、色や材質に関係なく、高精度な3Dデータが取得可能です。
3Dスキャナースプレーのタイプ
3Dスキャナースプレーにはどのようなタイプがあるのでしょうか。主な3種類に関して解説します。
酸化チタンセリサイト
酸化チタンセリサイトは、白色の粉末状顔料である酸化チタンと、鉱物の一種であるセリサイトを混合した3Dスキャナースプレーです。酸化チタンの高い白色度と光拡散性により、対象物の表面に均一な白いコーティングを形成し、光の反射率を安定させます。比較的安価で入手しやすく、様々な材質に使用できる汎用性の高さが特徴です。
また、化粧品の原料としても使用されている成分なので、人体への影響は少ないと考えていいでしょう。ただ、粉末状であるため、使用後はふき取り作業が必要です。
昇華タイプスプレー
昇華タイプスプレーは、塗布後に数十分ほどで昇華(固体から気体に変化)する性質を持つ3Dスキャナースプレーです。塗布物が昇華するため、スキャン後に除去する手間が省け、作業効率の向上が見込めます。
対象物に残留物が残らないため、繊細なオブジェクトのスキャンにも適しています。ただし、酸化チタンセリサイトに比べると高価な傾向があり、昇華するまでの時間が限られているため、広範囲のスキャンには不向きです。
探傷検査用現像剤
探傷検査用現像剤は、本来は金属の傷や穴といった表面欠陥を検出するために用いられるスプレーです。3Dスキャナー用としても利用されています。白色で薄い膜を形成するため、対象物の形状に影響を与えにくく、高精度なスキャンが可能です。
速乾性があり、作業効率が良いのもメリットです。ただし、金属以外の材質への使用は推奨されておらず、使用できる3Dスキャナーも限られます。
3Dスキャナースプレーのメリット
ここからは3Dスキャナースプレーのメリットを、以下の3つの視点でまとめます。
表面の色に関わらず読み取れるようになる
3Dスキャナースプレー最大のメリットは、表面の色に関わらずスキャンが可能になる点です。光を吸収しやすい黒い表面や、色彩が豊かであったりパターン化されていたりすると、スキャナーが形状を正確に読み取ることが難しい場合があります。
しかし、スプレーで表面を均一な色にすることで、これらの問題を解消し、安定したデータ取得が可能になります。色によるスキャンの失敗を防ぎ、作業効率を向上させたい場合に有効です。
反射面でも読み取れるようになる
光沢のある金属やガラスなど、反射率の高い表面は、スキャナーの光が正しく反射せず、データが欠損したり歪んだりする場合があります。3Dスキャナースプレーは、これらの表面を覆い、光の反射を抑えます。従来はスキャンが難しかった鏡面仕上げの製品や、ガラス製品なども、スプレーを使用すれば、精度の高い3Dデータを取得できるでしょう。
粗い表面でも読み取れるようになる
木材や石材など、粗い表面を持つ物体は、光の反射が拡散しやすく、ノイズの多いデータとなることがあります。3Dスキャナースプレーを使えば、これらの表面の凹凸を埋めるようにコーティングすることでき、光の反射を均一化して、より鮮明なデータ取得が実現可能です。複雑な形状やテクスチャを持つオブジェクトでも、高精度な3Dモデルを作成できるようになります。
3Dスキャナースプレーのデメリット
一方で、3Dスキャナースプレーを使用するデメリットも存在します。代表的な3点について見ていきます。
除去作業が必要となる場合がある
3Dスキャナースプレーの中には、スキャン後に除去作業が必要なタイプがあります。酸化チタンセリサイトや探傷検査用現像剤は、対象物にしっかりと付着するため、ブラシやエアダスターなどを用いて丁寧に除去しなければなりません。
この除去作業は、スキャン作業全体の時間と手間を増やす要因となり、場合によっては対象物の表面を傷つけてしまう点はリスクです。昇華タイプのスプレーを選べばこの手間を省けますが、その反面、コストが高くなるデメリットがあります。
どんな物にでも使えるわけではない
3Dスキャナースプレーは万能ではなく、材質によっては使用できない場合があります。例えば、デリケートな素材や、塗装が剥がれやすい素材には使用を避けたほうがいいでしょう。
また、吸水性が高い素材にスプレーすると、変色や変形を引き起こす場合があります。使用する前に必ずスプレーの説明書を確認し、対象物の材質に適しているか確認することが重要です。気になる場合は、事前にテストを行うといいでしょう。
精度が落ちてしまうことがある
3Dスキャナースプレーを使用することで、スキャナーが認識しやすい表面状態になる反面、精度に影響を及ぼす場合があります。スプレーを厚く塗ってしまったり、ムラができてしまったりすると、正確な測定は難しくなるでしょう。
また、細かいディテールが多いオブジェクトの場合、スプレーによって微細な形状が埋もれてしまう可能性もあります。スプレーを使用する際は、薄く均一に塗布することが重要です。高精度なスキャンを求める場合は、スプレーを使用しないのも選択肢のひとつです。
3Dスキャナースプレーの使い方
ここからは、3Dスキャナースプレーの使い方について解説します。
事前確認を行う
3Dスキャナースプレーを使用する前に、対象物の材質や形状、そして使用するスプレーの種類をよく確認しましょう。スプレーの説明書をよく読み、使用上の注意や推奨される塗布方法などを理解しておくことが重要です。
デリケートな素材や塗装面への使用は避け、事前に目立たない場所でテストスプレーを行い、問題がないか確認することをおすすめします。換気の良い場所で使用し、吸い込みや目に入らないよう準備をしておきましょう。
対象物にスプレーし、乾燥後測定
対象物にスプレーを塗布する際は、薄く均一に吹き付けることが重要です。一度に厚塗りせず、複数回に分けて薄く重ね塗りすることで、ムラなく綺麗に仕上がります。スプレー後は、十分に乾燥させましょう。
乾燥時間はスプレーの種類や環境によって異なります。完全に乾いていない状態でスキャンを行うと、正確なデータを取得できないだけでなく、スキャナーを故障させる場合があるので注意が必要です。
スプレー剤を除去する
スキャンが完了したら、スプレー剤の除去を行います。除去方法はスプレーの種類によって異なります。昇華タイプのスプレーであれば、自然に蒸発するため除去作業は不要です。
一方、酸化チタンセリサイトなどの粉末タイプは、ブラシやエアダスターなどを用いて丁寧に除去する必要があります。除去作業を行う際は、対象物の表面を傷つけないよう注意しましょう。また、粉塵を吸い込まないよう、マスクを着用することをおすすめします。
3Dスキャナースプレーが無い時の代用品
3Dスキャナースプレーが手元に無い場合は、代用品としてベビーパウダーや小麦粉を使用するのもいいでしょう。これらの粉末を対象物に薄くはたくことで、光の乱反射を抑え、スキャナーが形状を認識しやすくなります。
ただし、粉末が均一に付着しにくく、細かい部分に粉が詰まってしまう可能性があるため注意が必要です。あくまでも一時的な代用品として捉え、本格的なスキャンには専用の3Dスキャナースプレーを使用することをおすすめします。
まとめ
3Dスキャナースプレーは、光沢のある表面や黒色、複雑な形状など、スキャンが難しい対象物を3Dスキャナーで正確に読み取るための必須アイテムです。適切なスプレーを使用することで、スキャンデータの精度向上と作業効率化が期待できます。しかし、種類によって特性や用途が異なり、除去作業が必要な場合や、使用できない材質があるなど、デメリットも存在します。
この記事で紹介した内容を参考に、適切なスプレーを選び、3Dスキャナーの可能性を最大限に引き出してみてください。