PLA(ポリ乳酸)とは?3DプリンターPLAフィラメントの特徴やおすすめを解説
- 3Dプリンター
- 2024.7.29
- フィラメント メリット・デメリット
3Dプリンターは、思い描いたものを立体物として造形できるため、近ごろでは家庭でも利用する人が増えています。立体物を造形するには、3Dプリンターフィラメントと呼ばれる素材が必要です。数あるフィラメントの中でも、環境に優しい樹脂素材といえば「PLA(ポリ乳酸)」です。
この記事では、PLAの定義や、原材料、メリット・デメリットなどを紹介します。PLAを使った3Dプリンターでの作品制作にお役立てください。
目次
PLA(ポリ乳酸)とは?
PLAとは、再生可能資源で作られた生分解プラスチックの一種です。プラスチックといえば、石油を原料に生成されるものと思う人もいるでしょう。ただ、地球温暖化や石油資源枯渇という環境問題に対する意識の高まりを受け、石油由来に変わる存在としてPLAは20年近く前に開発されました。
PLAの原材料
PLAの原材料は、光合成により生産されるトウモロコシやサトウキビなどの植物由来再生可能資源です。このような植物の人が食べない部分を利用するため、人の食料を奪うことはありません。
PLAは原料の植物を砕いてでんぷんを取り出し、酵素を用いて分解します。得られた糖を乳酸菌で発酵させ、乳酸を作ります。乳酸を化学的な方法でつなげると、ポリ乳酸が生成されるのです。
PLAの特徴
PLAは植物由来の乳酸が原料であるため、生成中に排出される二酸化炭素の量は少量です。また、堆肥などの微生物が存在する土に埋めると、約1週間ほどで二酸化炭素と水のレベルまで分解されます。成分分解機能に優れたPLAは、農業用シートやハウス用フィルムなどの製品や包装用フィルム、レジ袋などにも使われています。
PLA樹脂のメリット
PLAは植物由来の原料のため、生産から廃棄するまでカーボンニュートラルなものづくりができる点が大きなメリットです。PLAのメリットを具体的に見ていきましょう。
環境に優しい
前述したようにPLA樹脂は環境に優しい素材です。植物由来の原料から作られるため、石油のように限りがあるわけではなく、持続可能な素材といえます。植物は光合成をするので二酸化炭素を吸収して酸素を生み出し、結果として二酸化炭素の排出量を減らせます。
また、PLAは条件が揃えば微生物の働きにより、二酸化炭素と水にまで分解されるため、仮に造形時に失敗したとしてもゴミの処理に困ることはありません。このような特徴から使い捨てのプラスチック製品の代用品などにも使われます。
初心者でも扱いやすい
PLA樹脂は、熱収縮性が低いため反りが生じにくい素材です。また熱で溶かして出力する際でも、熱収縮が生じにくいため寸法通りに成形できます。熱収縮性が高い素材を利用すると、造形途中で反りなどが生じ、思った通りの出来栄えにならないことがあります。PLA樹脂を使えば、初心者でも反りを抑えて造形することが可能です。
また、3Dプリンターの素材に柔らかいものを用いると、搬送される経路で曲がってしまい、ノズルが詰まってしまうことがあります。この現象をジャミングと呼びます。詰まるたびにメンテナンスが必要となるため、初心者を困らせてしまいます。PLA樹脂は硬い素材なので、ジャミングが置きづらいです。メンテナンス頻度も少なくなるため、初心者におすすめの素材です。
非毒性で安全である
PLA樹脂は、人体にも存在している乳酸が原料の素材です。したがって生体適合性があり安全です。
また非毒性で、乳酸の働きによる抗菌性が期待できるため、添加剤を加えなくとも抗菌効果を得られます。よって、子供たちの創造力を育む教育現場や、食卓を彩るアイテム作りにも適しています。
低価格で利用できる
PLA樹脂は、500gあたり約2,500円ほどで購入できます。この価格はABS樹脂と同程度で、TPE樹脂やPPS樹脂と比べると4分の1ほどの価格です。フィラメント素材のなかでは低価格の部類に入るため、コストを抑えながら、多くの作品制作に挑戦したい人に適しています。
PLA樹脂のデメリット
一方、PLA樹脂には以下のようなデメリットが存在します。
耐熱性が低い
耐熱性が低いPLA樹脂は、60℃程度の温度になると簡単に柔らかくなってしまいます。よって、試験装置や製造機械の部品など耐熱性が求められるパーツの造形には向いていません。
また、保管しておく際にも注意が必要です。直射日光が当たる場所など、高温になりうる環境での保管は避け、涼しい場所で保管する必要があります。
耐衝撃性が低い
PLA樹脂はほかの樹脂素材と比較すると、耐衝撃性は高くありません。硬さはあるのですが、その分、瞬間的な大きな力には耐えられない脆さを持ち合わせています。したがって、外部からの衝撃を受けやすいパーツの素材には用いない方がいいでしょう。
後加工が難しい
PLA樹脂は硬い素材であるため、やすりがけなどの後加工が困難です。やすりがけを行う場合には、電動研磨装置を用いたほうがいいでしょう。
そのため、他のフィラメント素材と比べると、表面を滑らかに仕上げるには手間がかかります。後加工を最小限にして、そのままの質感を活かした作品を造形する場合に向いている素材です。
3DプリンターPLAフィラメントのおすすめ5選
PLAのデメリットを補うために、その他の素材を配合した強化素材があります。ここでは下記の5つの素材について紹介します。
PLA木質
PLA木質は、PLAに木粉を配合した素材です。木独特の風合いと温かみが感じられる質感が特徴で、アートやオブジェ、建築模型などの造形に向いています。
木研磨ややすりがけができたり、木質の香りが漂ったりすることが大きな特徴です。木粉の配合率によって、色合いや風合いが異なるため、自分好みに合わせて素材を選べるのもPLA木質の魅力です。
PLAカーボン配合
PLAカーボン配合素材は、その名のとおりPLAにカーボンファイバーを配合しています。カーボンファイバーの効果により、通常のPLA樹脂よりも曲げ強度や耐衝撃性が向上しています。強度が必要なパーツや、軽量化が必要なパーツの造形に向いている素材です。
PLA蓄光
PLA蓄光は、PLAに蓄光素材を配合したもので、光を蓄積し、暗闇で発光するのが特徴です。幻想的な雰囲気を演出できるため、インテリア雑貨やアクセサリー、フィギュアなどの造形に用いると、面白い作品を作れるでしょう。
PLA Galaxy
PLA Galaxyは、PLAにガラス微小球添加剤を配合した素材です。華やかで高級感のある質感が特徴で、アクセサリーや装飾品、フィギュアなどの造形に向いています。ガラス微小球の大きさや、素材の色合いもさまざまなので、好みに合わせた造形を楽しめます。
PLAシルク
PLAに特殊な添加剤を加えて、シルクのような光沢と滑らかな質感を再現した素材がPLAシルクです。キラキラと輝く質感が美しく、高級感のある表面に仕上がります。アクセサリーや装飾品、アート作品などの造形に挑戦したい人にピッタリな素材です。
3DプリンターにおけるPLAフィラメントの用途
3DプリンターでPLA素材のフィラメントは、どのような用途で用いられるのでしょうか。以下の3点について見ていきます。
試作品づくり
PLA樹脂は比較的安価で、造形しやすいという特徴があります。そのため、設計と造形を繰り返す試作品づくりに向いています。さまざまな人が集まってアイデアを形にする段階でも、PLA樹脂を用いればコストを抑えながら、スピーディーに試作品を造形できます。
フィギュア
PLA樹脂は造形品質が安定しており、寸法のズレが少ないため、細かな造形が求められるキャラクターモデルや、オリジナルフィギュアなどの制作に向いています。鉄道模型や住宅模型などの作成にも適した素材です。
子ども向けおもちゃ
非毒性で安全性の高いPLA樹脂は、誤って口に入れてしまうこともある子ども向けのおもちゃに適しています。可愛らしい動物や乗り物、ブロックなど、子どもの創造力を育むおもちゃを制作することも可能です。
3Dプリンターの作品例は、下記のページでも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
3Dプリンターの作品例&アイデア集20選!簡単なものから上級者向けまで紹介
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まとめ
初心者でも扱いやすく、環境にも優しいPLA樹脂は、3Dプリンターの入門に最適な素材です。さらにその他の素材を配合した特殊なPLA樹脂を用いれば、中級者からベテランの人まで楽しむことができるでしょう。
弊社でもさまざまなPLA樹脂素材を扱っています。今回ご紹介した情報を参考に、用途に合ったPLA樹脂を選び、3Dプリンターをこれまで以上に有効活用しましょう。