カーボンPLAとは?3Dプリンターの革新的フィラメントを徹底解説
- 3Dプリンター
- 2025.1.20
- FLASHFORGE フィラメント メリット・デメリット
複雑な立体物を造形できる3Dプリンターは、フィラメントの素材を変えれば特性の異なる製作が可能です。近年では、従来のPLAの扱いやすさを維持しつつ、カーボンファイバーの強度と剛性を兼ね備えたカーボンPLAフィラメントも利用されています。
本記事では軽量で耐久性に優れ、金属パーツの代替品から精密な工業部品やスポーツ用具まで幅広い用途で使用できるカーボンPLAについて解説します。カーボンPLA対応の3Dプリンターも紹介するので、カーボンPLAを用いた造形を検討している方は最後までご覧ください。
なおカーボンフィラメントやPLAについて詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
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目次
カーボンPLAとは
3Dプリンターの革新的フィラメントともいえるカーボンPLAの定義と特徴について解説します。通常のPLAとの違いについてもまとめるのでご覧ください。
カーボンPLAの定義と特徴
カーボンPLAは植物由来のPLA(ポリ乳酸)樹脂にカーボンファイバー(炭素繊維)を配合した素材です。PLAの扱いやすさとカーボンファイバーの優れた機械的特性を兼ね備えています。
カーボンPLAの主な特徴には、高い強度と剛性や優れた耐衝撃性、良好な耐熱性などが挙げられます。カーボンPLAで造形された製品は、表面の仕上がりが美しく、積層跡が目立ちにくい点も特徴です。カーボンPLAの特性を活かして、金属パーツの代替品や高性能な工業部品、スポーツ用具などの用途で活用されています。
通常のPLAとの違い
カーボンPLAは配合されたカーボンファイバーの効果もあり、通常のPLAと比較して多くの点で優れた性能を示します。強度と剛性が大幅に向上しているため、条件によっては金属並みの強度を実現可能です。また、耐衝撃性も向上しているため、より過酷な条件でも使用できます。通常のPLAよりも優れた耐熱性を持っているため、カーボンPLAは高温環境下での使用にも適しています。
造形面ではカーボンPLAは積層跡が目立ちにくく、より滑らかで美しい表面仕上がりが実現可能です。通常のPLAよりも寸法安定性に優れているため、温度変化による変形や歪みが最小限に抑えられるのもメリットです。
このようにカーボンPLAは通常のPLAでは難しかった高性能部品や精密機器の製造に適しており、産業用途での需要が高まっています。
カーボンPLAのメリットとデメリット
実際にカーボンPLAを使用する前に、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
カーボンPLAのメリット
カーボンPLAの代表的なメリットは以下の3つがあげられます。
メリット
- 機械的特性
- 寸法安定性
- 表面仕上がり
機械的特性は、主に強度と剛性の向上が特徴で金属並みの強度を実現できる場合もあります。また、耐衝撃性が向上している点もポイントです。
温度変化による変形や歪みに強いのも特徴で、高精度が求められる部品でも安定した寸法を実現しています。また、積層跡が目立ちにくく、美しい表面仕上がりが実現できるのもメリットです。
カーボンPLAのデメリット
多くのメリットが得られるカーボンPLAにも、以下のようなデメリットが存在します。
デメリット
- 耐熱性
- ノズルへの負担が大きい
- 製造コストが高価
カーボンPLAは、通常のPLAと同様に60℃以上の環境では変形の恐れがあります。熱い飲みものを入れる容器や高温環境下で使用する製品には不向きなので、注意が必要です。
PLAと比べるとカーボンPLAは硬いため、3Dプリンターのノズルに負担をかけてしまいます。摩耗が激しくなってしまうため、硬化鋼などの専用ノズルが不可欠です。さらに原料自体も割高になってしまうため、PLAと比べると製造コストが高くなってしまうデメリットもあります。
カーボンPLAの用途
メリットとデメリットを理解できたところで、実際にカーボンPLAが利用されている用途を3つ紹介します。
- 試作品の作成
- 工業製品の部材
- スポーツ用具
順番に詳しく見ていきましょう。
試作品の作成
カーボンPLAは優れた寸法安定性と造形性能から、試作品の作成に最適な素材のひとつです。通常のPLAと比較して高い強度と剛性を持つため、機能性試験用のプロトタイプ作成にも適しています。
カーボンPLAを使用すれば、最短数時間から1日程度で高強度・高剛性のパーツを造形できるため、従来の切削加工に比べて製品開発のリードタイムを大幅に短縮できます。
さらに、カーボンPLAは積層跡が目立ちにくく、滑らかで美しい表面仕上がりを実現できるため、外観確認用のモックアップ作成にも有効です。デザインの検証や形状の確認をスピーディに行うことができるため、製品開発サイクルの効率化に役立っています。
工業製品の部材
高い強度や剛性、耐熱性をもつカーボンPLAは、工業製品の部材としても活用されています。金属に比べて軽量でありながら金属並みの強度も可能であるため、軽量化が求められる分野で金属パーツの代替品として注目を集めている素材です。また、複雑な形状の部品を一体成形できるため、組立工程の簡略化にも貢献します。
寸法安定性に優れているカーボンPLAは精密な部品製作にも適しており、航空宇宙産業や自動車産業など、高精度な部品が求められる分野で特に注目されています。
スポーツ用具
スポーツ用具でもカーボンPLAは幅広く利用されています。自転車のフレームやホイール、ゴルフクラブのヘッドやシャフトなどの部品が3Dプリンターで製作可能です。カーボンPLAを使用すれば、従来の量産品では実現困難だった選手個人の体格や好みに合わせたカスタマイズも容易に実現できます。
プロトタイプの製作と検証をスムーズに行えるようになるため、新しいデザインの開発サイクルが短縮可能です。このようにカーボンPLAの特性は、スポーツ用具の軽量化と生体力学的安定性の向上に役立っています。
おすすめのカーボンPLA対応3Dプリンター3選
カーボンPLAで造形するには、対応した3Dプリンターが必要です。こちらではおすすめの3Dプリンターを3つ紹介いたします。
カーボン3Dプリンターに関しては、こちらの記事も参考にしてください。
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Creator4S
FLASHFORGE社の「Creator4S」は、業務用途に特化した高性能3Dプリンターです。400×350×500mmの大型造形サイズを誇り、複雑な形状の一体成形が可能です。
最大360℃まで加熱可能なノズルにより、カーボンPLAだけでなくカーボンファイバーや一部のスーパーエンプラなど、約20種類のフィラメントに対応しています。ヒートチャンバーは65℃まで温度調整可能なので、ABS樹脂などの収縮しやすい材料でも反りを抑えた安定造形を実現します。
「Creator4S」は試作品から最終製品の製造まで幅広い用途に対応する、高性能かつ多機能な3Dプリンターとして位置づけられています。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Guider3 |
---|---|
対応素材 | PLA・ABS・PETG・PC・PA・ASA・PBAT・TPC・TPE・PVA・HIPS・PA-CF・PETG-CF・PLA-CF・TPU |
商品詳細 | 製品ページを見る |
Creator3 Pro
FLASHFORGE社の「Creator3 Pro」は、カーボンファイバーにも対応したデスクトップ型の業務用3Dプリンターです。
独立式デュアルヘッドを搭載しているため、2色印刷やミラー印刷、コピー印刷など多様な造形に対応しています。カーボンPLAにも対応しており、ステンレスノズルや超硬ノズルを使用することでPA-CFなどの高性能素材の出力が可能です。
デュアルヘッドファンによる冷却システムの改善や非接触式レベリングセンサーの搭載、柔軟性のある磁気プラットフォームの採用などにより、高品質な造形を実現しています。最大造形サイズは300mm x 250mm x 200mmで、積層ピッチは0.05〜0.3mm、造形精度は±0.2mmです。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Guider3 |
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対応素材 | PLA・ABS・PA・PC・PVA・HIPS・PETG・PETG-CF・PA-CF・TPU(0.8mmノズル使用時) |
商品詳細 | 製品ページを見る |
Guider3
FLASHFORGE「Guider3」は、コンパクトな筐体でありながら、300×250×340mmの大容量な造形スペースを確保している3Dプリンターです。
Guider3は320℃まで加熱可能なノズルを搭載し、0.4mm/0.6mm/0.8mmの3種類のノズル径に対応しています。ABSやPLA、カーボンPLAだけでなく、PCやPAなどのエンプラ素材の印刷も可能です。
高感度な近接センサーを搭載したレベリングシステムにより、プラットフォームの水平検知を自動で行うため、レベリング作業が効率的に行えるのも特徴です。
メーカー・製品名 | FLASHFORGE・Guider3 |
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対応素材 | ABS・PLA・PC・PA・ASA・PETG・PA-CF・PLA-CF・PETG-CF |
商品詳細 | 製品ページを見る |
カーボンPLAフィラメントの選び方
実際にカーボンPLAフィラメントを選ぶ際のポイントを2点見ていきましょう。
カーボンファイバー含有量の違い
カーボンPLAフィラメントのカーボンファイバー含有量は、種類によって異なります。含有量が多いほど強度と剛性が向上する一方で、脆くなる傾向があります。含有量が多くなると、印刷の難易度が上がりノズルの摩耗も激しくなります。用途に応じて、強度と印刷のしやすさのバランスを考慮し、適切な含有量を選択しましょう。
品質と価格のバランス
高品質なカーボンPLAフィラメントは安定した造形が可能であるため、結果的にコストを抑えた造形物が製作できます。低価格のフィラメントでも十分な性能を発揮する場合もあるものの、作り直しが発生して余計なコストが発生する可能性もあります。用途や予算に応じて、コストパフォーマンスの良いフィラメントを選びましょう。信頼性の高いメーカーの製品を選べば、安定した品質を確保できます。
カーボンPLAフィラメントに関するよくある質問
ここではカーボンPLAフィラメントに関する3つの質問について回答します。
- 通常のPLAと互換性はありますか?
- カーボンPLAの耐熱温度は?
- カーボンフィラメントの耐久性はどのくらいですか?
順番に見ていきましょう。
- 通常のPLAと互換性はありますか?
- カーボンPLAは通常のPLAと基本的な特性は似ているものの、完全な互換性はありません。カーボンPLAは通常のPLAよりも硬く摩耗性が高いため、専用の硬化鋼ノズルや0.5mm以上の太いノズルが必要です。印刷設定も異なるため、より高い温度設定が必要になることもあります。
- カーボンPLAの耐熱温度は?
- カーボンPLAの耐熱温度は通常のPLAよりもやや高い傾向にあります。ただし、これは使用環境や製品の形状によって多少変動します。カーボンファイバーの添加により耐熱性が向上しているものの、高温環境下での使用には依然として注意が必要です。車内や直射日光の当たる場所での使用は避けましょう。
- カーボンフィラメントの耐久性はどのくらいですか?
- カーボンPLAフィラメントは通常のPLAよりも高い耐久性を持っています。カーボンファイバーの添加により、強度と剛性が大幅に向上し耐衝撃性も高くなっているからです。引張強度や曲げ強度が通常のPLAの1.5倍から2倍程度になることもあります。非常に薄い部分や細かい構造では脆くなる可能性があるため、設計時には注意が必要です。
まとめ
カーボンPLAは、3Dプリントに革新をもたらす高性能フィラメントです。通常のPLAの扱いやすさを維持しつつ、カーボンファイバーの強度と剛性を兼ね備え、幅広い用途で活躍しています。試作品から最終製品まで、さまざまな分野で利用可能です。
カーボンPLAを用いた造形を検討されている方は、記事の内容を参考に理想の造形物を制作してくださいね。また、カーボンPLA対応の3Dプリンターの導入を検討している方は、お気軽に弊社までご相談ください。用途や予算に合わせて、最適な機種を提案いたします。
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