3Dプリンターで使える素材14種類の特徴を紹介!素材の価格相場は?
3Dプリンターで造形するときは、用途に合わせて素材を使い分けることが大切です。
3Dプリンターで使える素材にはさまざまな種類があり、それぞれに精度や強度などが異なります。
また、造形方式によって対応している素材の種類は異なり、価格相場にも幅があるため、最適な素材を判断するのは簡単ではありません。
この記事では3Dプリンターで使える主な素材14種類とその特徴や用途、素材の価格相場を紹介します。
3Dプリンターの素材選びで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
3Dプリンターに使用する素材とは?
3Dプリンターの素材は、紙のプリンターでいうインクにあたります。
3Dプリンターの素材には主に樹脂やプラスチック、金属、ゴムなどの材料が使用されますが、使用できる素材の種類は造形方式によって異なります。
大きく分けると下記のとおりです。
- 熱溶解積層方式:フィラメント
- 光造形方式:光硬化性樹脂(レジン)
- インクジェット方式:ポリマー樹脂、ワックス
- 粉末焼結方式:粉末素材
3Dプリンターの素材はそれぞれ特徴や強度、精度などが異なるため、作りたいものによって使い分けることが大切です。
3Dプリンターで使える主な素材14種類を紹介
3Dプリンターの素材は造形精度や強度、カラー、使用する環境などによって最適なものを選びましょう。
かつてはABS樹脂やPLA樹脂が3Dプリンターの素材として一般的でしたが、最近はさらに耐候性や耐熱性、耐薬品性などに優れた素材が使えるようになっています。
ここでは、3Dプリンターで使える14種類の主な素材を見ていきましょう。
熱可塑性樹脂(フィラメント)
熱可塑性樹脂は溶融した状態でプリントされ、冷却すると固化する素材です。
フィラメント型の3Dプリンターで広く使用されています。
PLA樹脂
PLA樹脂はとうもろこしやサトウキビなどの植物性由来の再生可能資源で作られた熱可塑性ポリマーです。
印刷温度が180〜230℃と低く、他の素材に比べて扱いやすいのが特徴です。
また、印刷時の匂いや発煙が少ないメリットもあります。印刷が容易で仕上がりが良く、価格も安いため、3Dプリンターではよく使用されています。
ただし、衝撃に弱く、熱変形温度が60℃前後のため高温に弱いのがデメリットです。
PLA樹脂の用途 | 試作品、模型、玩具など |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
ABS樹脂
ABS樹脂はアクリロニトリル(A)・ブタジエン(B)・スチレン(S)が主成分の素材です。
強度や剛性が高く、靭性や耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性にも優れているのが特徴です。
PLA樹脂と同じように低価格で、3Dプリンターでよく使われています。
また、PLA樹脂に比べて柔らかく、造形後に塗装したり表面を磨いたりする加工に適しています。
一方で、収縮率が高く、反りが起こりやすいうえに、印刷時の匂いがきつい点がデメリットです。
ABS樹脂の用途 | 自動車部品、フィギュアのパーツなど |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
ASA樹脂
ASA樹脂は、アクリロニトリル(A)・スチレン(S)・アクリル樹脂(A)を主成分としており、ABS樹脂にアクリル成分が加わった構造です。
先ほど紹介したABS樹脂の弱点である、耐候性に優れているのが特徴です。
ABS樹脂に比べて反りが少なく、安定して造形できます。
強度や剛性、耐光性、耐UV性、耐熱性、耐薬品性に優れており、屋外で使用する製品の造形に最適です。
一方で、印刷時の匂いが強い点が、デメリットです。
ASA樹脂の用途 | 自動車部品、スポーツ用品など |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
PP樹脂
PP樹脂は3Dプリンターでよく使われる素材の1つであり、プラスチック製品に使われる素材です。
樹脂の中で最も比重が軽く、耐衝撃性や剛性、柔軟性、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性に優れています。
PP樹脂は化学的・機械的特性が優れているため、さまざまな産業分野での活躍が期待されています。
ただし、変形が起こりやすい点が課題です。
PP樹脂の用途 | 自動車部品、治具、食品包装容器など |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式、粉末焼結方式 |
TPU
TPUはポリオールやジイソシアネート、ジオールなどのウレタン前駆体で合成された素材です。
ゴムのような柔らかさと伸縮性が特徴です。
また、耐摩耗性や耐久性、靭性を併せ持ち、耐薬品性にも優れています。
ただし、一般的な素材よりも柔らかいため、造形難易度はやや高めです。
TPUの用途 | 靴のソール、スマートフォンカバーなど |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
PETG
PETGは、ペットボトルの材料として知られるPET(ポリエチレンテレフタレート)を、柔軟性を持たせて改質した素材です。
PETに比べて耐衝撃性に優れています。
その他、強度や剛性が高く、耐熱性や靱性、耐薬品性に優れており、印刷の仕上がりがきれいな点が強みです。
また、プリント中の反りや変形が起きにくく、安定的に造形できます。
ABS樹脂とPLA樹脂の良いところが組み合わさった素材とも言われています。
PETGの用途 | 半透明な造形物、冶具、機械部品など |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
ナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)
ナイロン樹脂は3Dプリンターの素材の中でも凡用性が高く、強度と耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックです。
耐衝撃性も優れており、摩耗にも強い特徴があります。
印刷時は260〜300℃の高温で接着性がよく、変形はあまり起きません。
一方で吸湿性が高く、水分を含むと強度が弱くなり、反りなどが起きやすくなる面もあります。
ナイロン樹脂の用途 | 治具、工具、機能性試験用の試作品など |
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対応可能な造形方式 | 粉末焼結方式、熱溶解積層方式 |
PC樹脂
PC樹脂はエンジニアリングプラスチックであり、プラスチック素材の中でも非常に衝撃に強い素材です。
精度や耐久性、安定性、強度、耐衝撃性、耐熱性に優れた製品で、自動車や医療、航空宇宙などの幅広い業界で活用されています。
また、透明性が高く、ガラスに近い光沢があるのも特徴です。
ただし、価格は安くありません。
PC樹脂の用途 | 治具、工具、強度が必要な構造部品など |
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対応可能な造形方式 | 熱溶解積層方式 |
液体樹脂(レジン)
液体樹脂は光や紫外線で硬化する液体の樹脂で、光造形方式の3Dプリンターで使われます。
エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂とは、液体のエポキシ樹脂と硬化剤からできた液体樹脂です。
耐熱性や耐薬品性、機械的強度、剛性、電気絶縁性に優れているのが特徴です。
積層ピッチが細かく、造形物の表面は滑らかに仕上がります。ABS樹脂やPP樹脂に似た性質がありますが、ABS樹脂よりも強度は弱く、代替え品にはなりません。
また、価格が高い点がデメリットです。
なお、エポキシ系樹脂に含まれる有機溶剤は中毒を発生させる恐れがあるため、取り扱いには注意しなければいけません。
エポキシ系樹脂の用途 | 展示会用模型、形状見本、簡易治具 |
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対応可能な造形方式 | 光造形方式 |
アクリル樹脂
アクリル樹脂は透明度が高く、ガラス並みの光沢がある3Dプリンター素材です。
耐光性や耐薬品性、剛性、軽量性に比較的優れています。
着色が簡単で、微細な造形が可能です。
一方で、アクリル樹脂の造形物の表面は傷が付きやすく、衝撃に強くありません。
また、アクリル樹脂は液体素材で、紫外線照射により短時間で硬化します。
硬化収縮が少なく、寸法精度が高いのも特徴の1つです。
アクリル樹脂の用途 | 精度を求めるパーツ、フィギュアの原型など |
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対応可能な造形方式 | 光造形方式 |
その他
その他には、ワックスや石膏、金属フィラメントなどの特殊な素材が含まれます。
ワックス
ワックスは、ロストワックス鋳造で使われる素材です。
ロストワックス鋳造とは作ったロウ型を砂型に挟んで加熱し、ロウを消失させてできた空間に金属を流し込む加工技術を指します。
3Dプリンターでは、ロウ型を3DCADデータで作るときに使うのがワックスです。
造形物の表面は滑らかで、高精度に仕上がります。
ただし、強度や耐熱性が低いため、用途は限定的です。
ワックスの用途 | ジュエリー製造の試作品、美術品の原型など |
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対応可能な造形方式 | インクジェット方式 |
ゴムライク
ゴムライクは、ゴムのような弾性のある樹脂素材です。
造形物の質感は滑らかで、ゴムのように微細に表現できるのが特徴です。
積層強度が高いため、引っ張っても剥離しません。
価格は他の剛性樹脂よりも高いものの、その性能の高さから試作品から最終製品まで幅広い用途で使用されています。
ゴムライクの用途 | ゴム製品の試作品、ハンコ・スタンプなど |
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対応可能な造形方式 | インクジェット方式、光造形方式 |
石膏
石膏は造形スピードが早い一方で、強度が弱く脆い素材です。
また粉末材料特有のざらつきが造形物の表面に残りやすく荒いため、後処理が必要な場合があります。
その一方で、着色できるため、さまざまな色の造形物を製造できるのはメリットです。
石膏の用途 | 医療モデル、鋳型模型など |
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対応可能な造形方式 | インクジェット方式 |
金属
金属素材の原料は、主にチタン合金やアルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属粉末です。
ほとんどの金属は強度が高いですが、金属の種類によって強度や硬度、耐熱性、耐食性が異なります。
自由な形状で設計でき、高機能製品を短期製造できるメリットがある一方で、造形コストは高い傾向があります。
金属の用途 | 自動車や航空機、医療パーツなどの最終製品 |
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対応可能な造形方式 | 粉末焼結方式 |
3Dプリンターの素材の価格相場
3Dプリンターで使える素材の価格相場は、素材の種類によってさまざまです。
1kgあたり2,000円以下で購入できるものもあれば、10万円を超えるものもあります。
ここでは、造形方式別に樹脂素材の価格相場をお伝えします。
造形方式 | 素材の種類 | 素材の価格相場(1kgあたり) |
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熱溶解積層方式 | PLA樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、PP樹脂、TPU、PETG、ナイロン樹脂 、PC樹脂 | 2,000~10万円前後 |
光造形方式 | エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、レジン、ゴムライク | 2,000~4万円前後 |
インクジェット方式 | レジン、ワックス、ゴムライク、石膏 | 約6万円~ |
粉末焼結方式 | PP樹脂、ナイロン樹脂、金属 | 約1万円〜 |
ただし、基本的に3Dプリンター本体の価格と素材の価格は比例する傾向があります。
高性能で高額な3Dプリンターは使える素材の幅も増え、高性能で高価な素材も使えるようになるのです。
まとめ
3Dプリンターで使える素材にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や性能が異なるため、用途に合わせて最適な素材を選ぶことが大切です。
3Dプリンターの機種によって対応可能な素材の種類が異なるため、造形したいときは3Dプリンターの対応素材も併せて確認しましょう。
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