3Dプリンターフィラメントとは?種類と選び方をわかりやすく解説
3Dプリンターを使えば、さまざまなものを造形できますが、造形するには3Dプリンターフィラメントの存在が欠かせません。
フィラメントには素材によって多くの種類があり、用途や目的に応じて使い分けて造形します。
3Dプリンターで理想的な造形物を作るためには、3Dプリンターフィラメントの特徴や性能などの知識をある程度持っておくことが大切です。
この記事では、3Dプリンターフィラメントの種類や選び方、保管方法を紹介します。
目次
3Dプリンターフィラメントとは
3Dプリンターフィラメントは、主にFDM(熱用解積層方式)の3Dプリンターで物体を作る際に使用する材料です。
細長い糸状の形をしており、層状に積み重ねて物体を作成します。
印刷機がインクがないと印刷できないように、3Dプリンターはフィラメントがないと造形できません。
3Dプリンターフィラメントの種類
3Dプリンターフィラメントには、プラスチックや繊維系、木材系などさまざまな種類があります。
ここでは、フィラメントの代表的な種類と特徴を紹介します。
PLA
PLA(Poly-Lactic Acid)は、3Dプリンターでよく使われる素材です。
主にトウモロコシやジャガイモを原料としており、最終的に水と二酸化炭素に分解されるため、環境に優しいと言われています。
造形中の匂いがあまりなく、冷却時の熱収縮が少ないため、初心者でも扱いやすいのが特徴です。
成型するときに材料が一様に収縮するのでひずみや反りが起こりにくく、安定して出力できます。
一方で、高温や耐熱性、耐衝撃性が劣るデメリットがあります。
PLAの使用用途はおもちゃやデコレーション、低負荷パーツ、プロトタイピングなどさまざまです。
ABS
ABSは、下記3つの成分を組み合わせた材料です。
- Acrylonitrile(アクリロニトリル)
- Butadiene(ブタジエン)
- Styrene(スチレン)
PLAと同じく、3Dプリンターでよく使用される素材で、一般的なプラスチック製品によく使われています。
ABSは強度が高く、耐衝撃性や耐熱性、耐摩耗性に優れているのが特徴です。
ただし、ABSを使用して3Dプリンターで出力するには約230〜260℃の高い温度が必要です。
また、サイズの大きい物体を造形する際は、反りやひずみが生じやすいデメリットがあります。
ABSは、自動車部品やプラモデル、フィギュアのパーツなどの動作する仕組みを持たせたいものによく使用されています。
PET・PETG
PET(Polyethylene terephthalate)は一般的にペットボトルの素材として使用され、透明性が高い素材です。
ただし、FDM法の3Dプリンターは層状に積み重ねて造形するため、ペットボトルほどの透明性は期待できません。
また、PETはペットボトルのように柔らかい素材なのに対し、PETGは化粧品ボトルなどに使用され、PET以上に透明性が高くて硬いのが特徴です。
PETとPETGはどちらも、強度や耐久性、耐熱性に優れています。
PAナイロン
PA(polyamide)ナイロンは、一般的にはナイロンとも呼ばれ、非常に優れた耐摩耗性や引張強度、弾性率、化学的耐性を持ち合わせています。
また、比較的軽量なので、機械部品の軽量化にも役立ちます。
このような性質から主な使用用途は自動車部品やギア、ベアリング、プーリー、医療用品などです。
機械的なストレス耐性・耐摩耗性が必要な造形物に向いています。
ただし、湿気に敏感なため印刷時の環境は、通気性が十分に確保された場所が理想です。
PP
PP(polypropylene)は、工業用商品で最も多く使用されるプラスチック素材の1つです。
優れた強度や透明性、光沢、耐薬品性、柔軟性を持ち合わせているのが特徴で、家庭用プラスチックの代表的存在でもあります。
PPは半透明と光沢のある質感を再現できるため、3Dプリンターでは試作品を作る際に重宝されています。
なお、PPを3Dプリンターで使用するときのデメリットは、密着性が弱い点です。
故に、ミスプリントや反りが発生する可能性があります。
PC
PC(PolyCarbonate)は、フィラメントの種類の中でもエンジニアリング・プラスチックの部類に入る材料です。
通常のプラスチックよりも強度や耐熱性が優れており、PCはエンジニアリング・プラスチックの代表的存在です。
PCはこれまで金型や切削でしか利用できませんでしたが、最近は3Dプリンターフィラメントとして登場し、製品開発の幅を新たに広げてくれる材料として期待されています。
ただし、PCフィラメントは取り扱いが難しく、使用できる3Dプリンターの種類も限られているのがデメリットです。
SMP
SMP(Shape Memory Polymer)は、形状記憶ポリマーとも呼ばれ、3Dプリントした物体をお湯などで55℃以上に温めると柔らかくなって、形を変えられます。
従来のフィラメントは一度造形すると形は変更できませんが、SMPは造形したあとでも温めれば形を変更できます。なお、SMPがよく使用される場所は、メガネやギプス、注射針などです。
PPGW
PPGWは、ポリプロピレン(PP)にガラスウールを配合したフィラメントです。
ポリプロピレンは、収縮率が大きくて3Dプリンターでの造形が困難と言われてきました。
ところが、ガラスウールを配合したことで収縮率が軽減されて、3Dプリントできるようになりました。
PPGWは、高強度で壊れにくくて折れにくく、汎用性が高い材料です。
これがおすすめ!用途別フィラメントの選び方
3Dプリンターフィラメントは多くの種類があり、それぞれ特徴や用途は異なります。
それぞれの特徴を理解して、最適なフィラメントを選ぶと、3Dプリンターによる造形の成功率や造形物の質は向上するでしょう。
3Dプリンターに合うフィラメントを選ぶ
所有している3Dプリンターの種類に応じて、選択できるフィラメントの種類も異なります。
出力に失敗しないために、メーカー純正のフィラメントを選びましょう。
3Dプリンターの機種によっては、他社製のフィラメントを使用できますが、メーカー保証対象外となり、万が一壊れても保証されません。
また、フィラメントの種類によって、出力時のノズル温度やヒートベッド、エクストルーダーの方式なども異なります。
例えば、エクストルーダーがダイレクト方式の場合は、選択できるフィラメントの種類が豊富です。
一方で、ボーデン式のエクストルーダーの場合は選択できるフィラメントの種類が少なくなります。
フィラメントを選ぶ前に、3Dプリンターに対応しているフィラメントの種類を確認しておきましょう。
フィラメントの硬さや強度などで選ぶ
フィラメントの種類によって硬さや強度などは異なるため、作ろうとしている製品によって選択するフィラメントも異なります。
例えば、小物入れを作る場合は、どのようなフィラメントを選んでも作れるかもしれませんが、スマートフォンケースは違います。
スマートフォンケースはスマートフォンをはめこまないといけないので、ある程度の柔軟性が必要です。
そのため、縮めたり曲げたりしても簡単には割れない柔軟性のある素材、例えばABSやPETGが適しています。
フィラメントの色や質感で選ぶ
フィラメントの種類によって、色や質感もさまざまです。
例えば、透明性の高いものや木が混ざったもの、金属のような質感のものなど、樹脂製とは思えないほどさまざまな質感のフィラメントが販売されています。
フィラメントの色や質感を使い分ければ、いろんなものを造形できるでしょう。
3Dプリンターフィラメントの適切な保管方法
3Dプリンターフィラメントは湿気に弱いため、保管方法を間違えると品質や性能が劣化する恐れがあります。
フィラメントが劣化し、造形物に悪影響を及ぼさないためにも、適切な保管方法を確認しておきましょう。
多湿を避けて保管する
フィラメントは湿気に弱いため、乾燥剤やシリカゲルなどと一緒に密閉できる袋や箱に入れて保管しましょう。
さらに、高温環境であれば、フィラメントにとってより理想的な環境です。
高温環境は、そもそも空気中に含まれる水分量が少ないため、フィラメントが吸湿するリスクも少なくなります。
素材ごとに分けて保管する
複数種類のフィラメントを保管する場合は、袋や箱を使って素材ごとに分けて保管することも大切です。
それぞれ分けることで、異なる素材のフィラメントが混ざり合うリスクを軽減できます。
無料サンプル造形
APPLE TREEでは、3Dプリンターの導入を検討している法人のお客様を対象に、無料でサンプル造形を提供しております。
当社で取り扱っている3Dプリンターは製品開発、部品製造、アート作品など様々な用途に適しており、サンプル造形を通じてその精度、強度、材質を実際にご確認いただけます。
また、ベンチマーク用のサンプル造形もご用意しておりますので、ご興味があればお気軽にお問い合わせください。
まとめ
3DプリンターフィラメントにはPLAやABS、ASAなどのさまざまな種類があり、それぞれ色や質感、性能などが異なります。
フィラメントを選ぶ際は、造形物の種類に応じて必要な性能を持つ材料を選ぶことが大切です。
適切にフィラメントを選択できれば、造形の成功率や造形物の品質も向上するでしょう。
当社では3Dプリンターの導入支援を行っております。
貴社の目的に応じて最適な機器をご提案させていただきますので、導入をご検討中の方はお気軽にご相談ください。