3dプリンターでしか作れないものは?作れないもの・作ってはいけないものも紹介
- 3Dプリンター
- 2024.10.1
3Dプリンターの登場により、ものづくりの世界に革命ともいえる変化が起きています。これまでの製造方法では不可能だった形状や構造が、3Dプリンターを使えば簡単に作れるようになりました。その一方で、3Dプリンターにも限界があり、作れないものも存在します。また3Dプリンターを使えば作れてしまうものであっても、法律や倫理に反しているものは作ってはいけません。
本記事では、3Dプリンターでしか作れないものに注目し、形状や構造について解説します。また、3Dプリンターでは作れないもの、作ってはいけないものについてもまとめます。今後、3Dプリンターを使用して造形物を製作しようと考えている人は最後までご覧ください。
目次
3Dプリンターでしか作れないものの特徴
ここでは3Dプリンターでしか作れないものの特徴を、下記の5つの視点で見ていきます。
- 内部が空洞で完全に閉じた構造
- 完全に閉じた構造の内部に別の形状がある構造
- 既存の製法では開けられない穴のある構造
- 一体構造のヒンジ
- ジェネレーティブデザインされた形状
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
内部が空洞で完全に閉じた構造
従来の製造方法では、内部が空洞で完全に閉じた構造を製作するのは困難でした。3Dプリンターを用いれば、素材を積層させて造形するため継ぎ目のない状態で、完全に閉じた構造物が製作できます。
具体的には、中空のボールや密閉された容器などを製作する際に使用されています。また、この技術は航空宇宙産業や医療分野など、さまざまな産業で製品開発に活用されています。内部構造を自由にデザインできるため、強度と軽さを両立した部品の製造が可能になりました。
完全に閉じた構造の内部に別の形状がある構造
完全に閉じた構造の内部に、別の形状を持つ物体であっても3Dプリンターを用いれば、一体成形が可能です。例えば、中に可動部品が入ったボールや、内部に複雑な構造を持つ密閉容器などの製作を可能にします。
このように、3Dプリンターの積層造形技術を活用すれば、完全に閉じた構造であっても、内部を自由にデザインして、これまでにない製品の開発が可能です。
既存の製法では開けられない穴のある構造
3Dプリンターの積層造形技術は、従来の製造方法では不可能だった複雑な内部構造を持つ穴や経路の製作を可能にしました。
穴のある構造を金型を用いた樹脂成形で作ろうと思うと、穴の部分に金型のピンが存在する必要があります。複雑な場所の穴となると、金型で実現するのは困難です。また、後からドリルなどで切削しようとしても、ドリルが届かない位置では穴をあけることができません。
金型成形でも切削でも困難な複雑な穴であっても、3Dプリンターの積層造形であれば簡単に実現可能です。部品の軽量化が重視される航空宇宙産業や自動車産業などで、これまでにない部品製造に活用されています。
一体構造のヒンジ
ヒンジとは蝶番のことで、扉や蓋といった開閉させる動きを持つものを作るときに使用される部品です。従来の製造方法であれば、複数のパーツを組み立てる必要がありました。そのため、パーツの製造、組み立てという2つの工程を踏まなければなりません。
3Dプリンターを使用すれば、可動部分を含めて一度に造形可能です。組み立て工程が不要になるため、製造時間とコストの削減が期待できます。また、微細な構造や複雑な形状のヒンジも実現可能であるため、これまでにないデザインのヒンジを製作できるようになりました。
ジェネレーティブデザインされた形状
ジェネレーティブデザインとは、AIなどを活用してゼロからデザインを生成する設計手法です。これまでの製造方法に捉われないデザインが得られるのが特徴です。
ジェネレーティブデザインされた形状は、時として複雑で有機的な構造となる場合があります。従来の製造方法では製造が困難なものが設計されたとしても、3Dプリンターを使用すれば製造可能です。
実際に自動車部品の製造現場では、ジェネレーティブデザインと3Dプリンターの組み合わせでこれまでにない部品を開発し、軽量化に成功したという事例もあります。
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3Dプリンターでは作れないもの
ここまで3Dプリンターでしか作れないものを紹介しました。従来の製造方法に比べて複雑な構造でも製造できる3Dプリンターですが、逆に、3Dプリンターでは作れないものも存在します。ここでは代表的な下記の4つのものについてまとめます。
- ダイヤモンドやサファイアなどの結晶
- 薄さと耐久性を求めるもの
- 透明なもの
- 過度に複雑な内部構造を持つもの
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ダイヤモンドやサファイアなどの結晶
3Dプリンターでは、ダイヤモンドやサファイアなどの結晶構造を持つ物質を直接造形することはできません。結晶構造を持つ物質は、特定の温度や圧力条件下で原子が規則正しく配列されて形成されるため、3Dプリンターの積層造形技術では再現が困難です。
例えば、結晶構造を持つ物質を精製するには、高い温度が必要となる場合がありますが、現在の3Dプリンターはその温度に耐えられません。このように現在の3Dプリンター技術では、結晶の形状を模した造形物を作れるものの、本物の結晶の物理的・化学的特性を再現することはできません。
薄さと耐久性を求めるもの
3Dプリンターでは、極端に薄い構造や高い耐久性を必要とする造形物の製造には限界があります。積層造形の特性上、最小積層ピッチ以下の薄さは実現できません。また、薄すぎる部分は強度不足で破損しやすくなってしまいます。
例えば、高強度で薄い金属板や耐久性の高い薄膜フィルムなどは、従来の製造方法に頼らざるを得ません。3Dプリンターの技術は日々進歩していますが、現時点では薄さと耐久性を両立させることは困難であり、この分野では従来の製造技術が優位です。
透明なもの
3Dプリンターでガラスのような透明な物体を作ることは、現状では困難です。透明の素材を使用すれば、ある程度透明な物体を作れますが、それでも完全に透明とは言えません。
多くの3Dプリント方式では、積層造形の特性上、層と層の間に微細な隙間や不均一さが生じるため、光の透過を妨げてしまいます。ただし、後処理として研磨やコーティングを施すことで、透明度を高めることは可能です。
完全な透明性が必要な場合は、従来の製造方法に頼らざるを得ません。
過度に複雑な内部構造を持つもの
3Dプリンターは複雑な内部構造を持つ物体の製造に適していますが、過度に複雑な内部構造を持つものには限界があります。例えば、極端に細い通路や複雑に入り組んだ中空構造などは、サポート材の除去ができなくなったり、樹脂や粉末が詰まったりしてしまい、上手く造形できません。
また、積層造形の特性上、微細な内部構造を正確に再現するのが難しい場合もあります。このような極端に複雑な内部構造を持つ物体は、従来の製造方法や他の技術を組み合わせて製作しなければなりません。
3Dプリンターで作ってはいけないものは?
3Dプリンターでしか作れるもの・作れないものを理解すると、さまざまな造形物を製作してみたいと考えるでしょう。身近にあるものなどを模倣して、製作したくなるかもしれません。その際、法律的・倫理的に作ってはいけないものがあることを知っておいた方がいいでしょう。
具体的に以下の4つについて解説します。
- 公的な記章や標章など
- 知的財産権を侵害するもの
- 食品衛生法に触れるもの
- 拳銃などの武器
一つひとつ順番に見ていきます。
公的な記章や標章など
公的な記章や標章など、無断で作製することを法律で禁止されているものは、3Dプリンターで作ってはいけません。例えば、国旗・国章・警察・消防のマークや自治体のロゴなどが含まれます。公的な記章や標章を無許可で複製すると、偽造や不正使用とみなされ、罰則の対象となる可能性があります。
公的機関の信頼性や権威を損なう恐れがあるため、個人使用目的であったとしても、公的な記章や標章の3Dプリントは避けるべきです。どうしても製作したい場合は、関係機関に確認して許可を求めるようにしましょう。
知的財産権を侵害するもの
著作権や特許権、商標権などの知的財産権を侵害するものを作製することは違法です。例えば、キャラクターフィギュアや有名ブランドのロゴ、特許取得済みの製品の複製などが該当します。
知的財産権を侵害するものを無断で3Dプリントすると、権利者の利益を損なうだけでなく、法的責任を問われる場合があります。3Dプリンターを使用する際は、常に知的財産権に注意し、適切なものを製作するようにしましょう。
食品衛生法に触れるもの
3Dプリンターで食品に直接触れる器具や容器を製造する際は、食品衛生法に適合した材料を使用しなければなりません。一般的な3Dプリンター用の素材は、食品衛生法に適合していないため、これらを使用してクッキー型や食器などを作ることは違法となります。
食品衛生法に適合した材料を使用する場合でも、3Dプリンター本体や製造環境を含めた最終製品に対して試験が必要です。安全性を確保するためには、専門家の指導を受け、必要な検査や届出を行うことが重要です。
拳銃などの武器
3Dプリンターを使用して拳銃などの武器を製造することは、銃刀法違反となり厳しく禁止されています。銃刀法違反となるものには、実際に機能する銃器だけでなく、模造品や部品の製造も含まれます。
たとえ個人使用や趣味目的であっても、武器の製造は重大な犯罪行為です。当然、厳しい罰則の対象となります。3Dプリンター技術の発展に伴い、この問題への法的・倫理的対応が世界的に議論されています。
まとめ
3Dプリンターは、従来の製造方法では不可能だった複雑な構造や形状を実現し、ものづくりに革新をもたらしています。しかし、技術的な制約により作れないものや、法的・倫理的な理由で作ってはいけないものも存在します。したがって、3Dプリンターの可能性と限界を正しく理解し、適切に活用することが重要です。
今後も技術の進歩により、3Dプリンターの可能性はさらに広がっていくでしょう。ただし、利用者側には常に責任ある態度が求められます。3Dプリンターを使った製造について正しく理解し、創造性と法令遵守のバランスを保ちながら、新たな価値を生み出していきましょう。